仏本社CEOも異例な出席 なぜ二子玉川の街中で「シトロエンの家」を再現した?

公開 : 2019.11.27 19:38  更新 : 2021.10.11 09:29

モーターショー、昔のものに?

今回のシトロエンのように、最近は自動車メーカーがモーターショーではなく、独自イベントを開催するケースが世界各地で増えている。

日本では、トヨタが「ヤリス」、「超小型EV」、「次期MIRAIコンセプト」などを東京モーターショー開催の数週間前に、トヨタ商業施設メガウェブで開催。

自動車メーカーがモーターショーではなく、独自イベントを開催するケースが世界各地で増えている。
自動車メーカーがモーターショーではなく、独自イベントを開催するケースが世界各地で増えている。

ワークショップ形式として、デザイン、車体、パワートレインなど各部門の担当者がメディアとじっくりと意見交換をする場を設けた。

このような商品やサービスのメディア向けプレゼン方法は元々、GAFAと呼ばれるグーグル(親会社はアルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの米ITジャイアンツが構築し、中国のIT大手であるバイドゥ、アリババ、テンセントにも伝播したものだ。

そのトレンドが自動車産業にも影響を与え始めている。

キーポイントとなるのは、ブランド戦略である。モーターショーのように各社が横並び状態での展示では、ブース毎に趣向を凝らしても、ショー全体の雰囲気の中ではひとつのブランドが目立つことは難しい。

一方、今回の「シトロエンの家」では、シトロエン独自のマーケティング戦略が肌感覚で理解できる。最先端トレンドに敏感なセレブな街・二子玉川を情報の上流として、全国各地のシトロエンディーラーでのブランディングを広めていくことに繋がる。

2019年は4000台を突破へ

もうひとつ、「シトロエンの家」をこの時期に日本で開催した理由がある。

それは、好調な販売実績だ。シトロエンが日本法人による販売を始めて今年で22年。2019年の販売実績は過去最高となる4000台を突破する見込み。前年比では51%という大きな伸びだ。

シトロエン・ベルランゴ
シトロエン・ベルランゴ

日本でのフランス車の市場はまだまだ小さいとはいえ、クルマ好きのシトロエンシフトは確実に起こっていることを、数字は証明している。

さらに、日本でのシトロエンには追い風が吹いている。今年(2019年)10月に販売を始めた、日本初導入の「ベルランゴ」はネット予約を開始して5時間半後に限定数100台が完売した。そのため、11月30日朝9時から追加枠のネット予約を始める。

ブランディングという観点で、シトロエンが日本でここまで注目を集めるとは、自動車業界関係者の多くがまったく予想していなかったはずだ。

これも、クルマを取り巻く市場の大きな変化の一端なのかもしれない。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。
  • 桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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