長期テスト BMW M5(最終回) スーパーカーの速さと高級サルーンの快適性

公開 : 2019.11.30 18:50  更新 : 2019.12.01 10:05

4ドアサルーンにハイパワー・エンジンと4輪駆動システムを組み合わせたF90型のBMW M5。これほどの凄まじいパワーや4輪駆動が、実環境でどんな価値を持つのかを確認します。もっとも、最新のM5を確かめないわけにもいきません。

積算1万9511km 意外と積めるM5

text:Matt Prior(マット・プライヤー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
身長近くある高さの雑誌の平置きを想像して欲しい。その9つぶんがM5に詰める雑誌の量。トランクの他にリアシートと助手席。シートの足元にまで詰め込んだ場合。

恐らく500kgは超えていたと思う。重さでサスペンションは縮んでいたけれど、調子よく走れた。

BMW M5(F90)
BMW M5(F90)

積算1万9915km 後輪だけ減りが早いタイヤ

タイヤの情報通からのありがたい話。M5のタイヤのバルブは少しかっこいい。だが数年立つと腐食してホイールにも悪影響を及ぼすらしい。そうなると交換も大変だとか。

リアタイヤだけ新しいピレリPゼロを準備することになった。基本は4輪駆動でも後輪駆動モードが付いているから、減りが早いのだ。

BMW M5(F90)
BMW M5(F90)

積算2万4111km スーパーカーの速さと高級サルーンの快適性

スーパーカーに乗ったらどれだけ速いのか。高級サルーンはどれだけ快適なのか。この質問に同時に答えることができるのが、BMW M5に乗った時の感想だ。

これまでの長期テストで、約1万6000kmをともにしてきた。600psの最高出力を持つBMW M5だが、スーパーカーらしくはないと考えるかもしれない。

BMW M5(F90)
BMW M5(F90)

M5は目立った整備も必要とせず、何か部品が外れることはなかった。スピードを抑える道路の起伏でバンパーをこすることもなかったし、赤信号でレースを挑まれることもなかった。向こう見ずなスピードで走行できるクルマだが、傷つくような陰口をされることもなかった。

10万ポンド(1400万円)ほどする長期テスト車のM5は、0-96km/h加速3.3秒という俊足の持ち主。積極的に走り込んだ割に悪くない、M5らしい結果だったと思う。

ムルシエラゴを超えるラップタイム

今回のBMW M5は、記憶の中で最も多くの写真やビデオ撮影に用いられた。英国の西部でM5を受け取り、そのままアングルシー島でサーキット走行を短くこなし、すぐに続いてライバルモデルとのグループテストを実施した。その結果はM5の勝利。

さらに英国の自動車研究開発センター、MIRAに持ち込んでロードテストを実施した。ここでは0-96km/h加速時間を計測し、161km/hへは7.5秒で到達。0-400mは11.5秒で走った。0-1000mに要する時間も20.8秒でしかなかった。

BMW M5(F90)
BMW M5(F90)

ハンドリングが試されるサーキットでは、ウェットコンディションながら1分14.5秒で周回。このタイムはランボルギーニ・ムルシエラゴが、ドライコンディションで走った時間よりも速いもの。スーパーカー並みに速いのだ。

600ps級を含む、何台かのライバルとの直線加速テストも繰り広げた。アルピナB5との比較テストも思い出深い。テスターの中には、よりしなやかな雰囲気を持つアルピナB5の方が好みだという人も数名いた。実際、多くの場面でわたしもそう感じることがあったことは事実。

エグゼクティブ・サルーンとしてBMW 5シリーズの完成度は高く、AUTOCARの姉妹誌では、選ぶべきラグジュアリー・カーだと評価されている。でもわたしは、M5は単にラグジュアリーなクルマだとは思わない。

価格は間違いなくラグジュアリーだ。基本価格は8万8000ポンド(1232万円)で、1万4000ポンド(196万円)ぶんものオプションが付いている。しかし乗り心地は高級感というより、操縦性に軸が振ってある。上質で静かで快適だから、素晴らしいエグゼクティブカーには違いないが、高級とはいい難い。

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