映画ワイルド・スピードのスカイラインGT-R(BNR34)、なぜ右ハンドルだったのか?

公開 : 2019.11.30 06:00

映画に出たR34、15年で解禁カナダ登録説

では、15年で解禁となるカナダで登録したのでは? と思う人もいるかもしれない。

カナダに住所があればカナダ登録も可能で、実際カナダナンバーの右ハンドルR34がアメリカ国内で走っているのを何度か見かけたこともある。

R32のフロントをR34風に変えるキット装着車。 出典:MONTU MOTORS
R32のフロントをR34風に変えるキット装着車。 出典:MONTU MOTORS

だが実際はカナダ登録のクルマをアメリカで日常的に使用することはかなり厳しくチェックされるため、映画に使ったり、ポールが私用で使ったりというのはほぼ不可能だ。

右ハンドル車でも、自動車メーカーがテストのために輸入したり、展示会に出展したりするために輸入する分には問題ない。

例えば、米国トヨタがテストのために日本から右ハンドルのトヨタ車をアメリカに輸入して公道走行……といった場合などは所定の手続きを取れば問題なく可能だ。

また、先のSEMAショウには日本のビルダーがカスタムされたジムニー(日本仕様右ハンドル)を輸入して出展していたが、これももちろん展示用なのでOK。

要は、アメリカで一般ユーザーに販売し登録する以外なら右ハンドルでもほぼ、問題ないのだ。

そして本題。ワイルド・スピードに出てきたR34についてである。

実際、この映画と同じ仕様(2作目に登場した銀と青、4作目登場の青)のR34は世界中で非常に人気が高く、海外オークションでは1000万円以上の価格を付けるものもざらだ。

25年ルールを待ちきれない人のためにR32のフロントをR34風に変えるキットまで販売されている。ミニカーとしても多数販売されており、もちろんそれらもすべて右ハンドルだ。

2018年のSEMAショウには、「ポールが生きていたらR34にこんなカスタムをしたんじゃないか?」というショーモデルも出展されていた(写真)

衝突実験その他のテストをクリアすればOK

実は映画に登場したR34は、日本人が経営していたモトレックス(本社:米国カリフォルニア州)という会社が日本から並行輸入したクルマである。

右ハンドル車ゆえ、もちろんそのままでは販売/登録できないので、米国運輸局が定める所定のテスト(前面衝突/側面衝突他)も実施し基準をクリアし、カリフォルニアの排ガステストに対応するための対策も行われて審査をパスした。

アメリカは日本のような車検はなく、改造はかなり広い範囲で認められているのだが、車両の登録や安全性、環境基準に関しては意外とシビア。
アメリカは日本のような車検はなく、改造はかなり広い範囲で認められているのだが、車両の登録や安全性、環境基準に関しては意外とシビア。

それらと同じ型のR34を日本から輸入し米国で一般ユーザーに販売していたのである。

映画に使われたR34も同社によってテストをクリアして販売されていた、正規の右ハンドル車ということになる。

カナダ登録なのではないか? 芸能人だから特別扱い? 展示用として輸入したものを使っていたのでは? 映画の撮影用として特別に輸入が許可されたのでは?

いずれも違っていたというわけだ。

アメリカは日本のような車検はなく、改造はかなり広い範囲で認められているのだが、車両の登録や安全性、環境基準に関しては意外とシビアだ。

ただし、実はこの話にはまだ続きがある。モトレックス社が衝突試験などを行って輸入した右ハンドルのR34は15台前後という説がある。

おそらく、ポール・ウォーカーが所有していたR34は何の問題もなかったと考えるが、あとの方に輸入されたモデルに関しては非合法なものも存在した。

映画に使われたR34やポールの愛車であるR34の手配も行い、米国におけるGT-Rの第1人者ショーン・モリスにインタビューを行っているので、また別記事で扱ってみたい。

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