新型 アウディRS6アバントに試乗 600psの全天候対応ステーションワゴン
公開 : 2019.12.04 09:50
A6並みに上質な乗り心地
ボディデザインと比べて、インテリアの変更さほど大きくなく、アグレッシブさは抑え気味。快適でサポート性も良いシートは新デザインで、ステアリングホイールには大きなシフトパドルが付いている。
荷室容量は標準のA6と同等の広さ。リアシートを生かした状態で565Lの容量があり、40:20:40で分割できるリアシートを畳めば、1680Lに広がる。
ドライビングモードにはコンフォート、オート、ダイナミック、エフィシェンシーが用意される。RS1とRS2と名付けられたカスタムモードを選べば、エンジンやトランスミッション、サスペンションやステアリングなどの設定を、任意で組み合わせて登録できる。
加えてRS2モードに限っては、電子シャシーコントロール・システムをオフにすることも可能。アウディのRSシリーズとしては初めての機能だという。
RS6アバントには40を超えるECUが搭載され、お互いに連携を取っている。600psの馬力を備えていながら、リラックスして快適に走らせることも驚くほどに簡単だ。見た目を裏切るほどに、初期設定はスポーティ性よりもコンフォート性を重視している。
エアサスペンションのおかげで、乗り心地は穏やかでクッションの効きも良い。22インチの大径ホイールを履いているが、よほど大きな舗装の剥がれた穴でもない限り、車内に振動を伝えることはない。
ダイナミックモードを選んでいても、スポーツエグゾーストの奏でるサウンドは静か。アクセルペダルを深く踏み込まなければ、RS仕様のアグレッシブなボディをまとったA6のようにすら感じる。
柔軟で強力なエンジンと機敏な操縦性
心を決めてペダルを踏み込めば、圧倒的な直線加速が明らかになる。強い衝撃が走るメルセデスAMGとも、騒がしいイタリアや英国製のV8エンジンともその仕草は異なるが、異常に速い。低速度域での洗練性を保ったまま、スピードを乗せていく。
V8ツインターボは驚くほどの柔軟性を持ち、レッドゾーンまでスルスルと回転する。AMG製ほどではないにしろ、スロットルを全開にすれば聴覚的な満足感も素晴らしい。とはいえ、クルマのパワーを実感するのは耳に届く音響ではなく、目で見る景色の移り変わりとなる。
タイトなカーブが続く道では、2速と3速を駆使して思う存分楽しめる。トルクバンドが広く扱いやすいエンジンのおかげだ。
トランスミッションは、オートモードでもパドルシフトで変速させても非常にシームレス。静かに効率的に変速をこなし、ドライブトレインの優れた部分を象徴するかのよう。
シャシーも先代のRS6から大きく良くなった。4輪操舵システムも効率的で、鋭く機敏にワゴンボディは向きを変える。ただしカーブの連続する道では、軽くない車重と大きなボディサイズは常に意識してしまうだろう。たとえ従来以上に高速で走れるとしても。
ステアリングホイールやシートの背もたれに伝わる、タイヤが掴む路面の感覚は殆どない。スチールコイルが採用されるDRC搭載車の場合、情報量は改善されるが、乗り心地はエアサスペンションより劣る。ハンドリングの向上と乗り心地の良さは、引き換えとなるようだ。
コーナリング途中でアクセルペダルを踏みつけると、リアデフがリアタイヤを押し進め、切り込んでいく感覚が伝わる。この反応がパワーを早めに与えてもトラクションが得られるという、クルマへの信頼と操る自信を生んでくれる。