【ロードテスト】ルノー・クリオ ★★★★★★★★★☆
公開 : 2019.12.07 11:50 更新 : 2020.01.05 23:02
操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆
新型クリオは、クラシックなフランスの小型車で定評ある運動性とはやや異なるキャラクターの持ち主だ。もちろん、現代のコンパクトカーにおいて、細いタイヤのシトロエン2CVどころか、プジョー205のようなクルマさえ見つけることができないのは、初めに断っておかなければならないだろう。
それでも、先代クリオは、ステアリングの軽さやハンドリングの名状しがたい繊細さ、乗り心地のしなやかさを兼ね備え、えもいわれぬフランス車らしい走りのフィーリングを醸し出していた。それも、スプリングが硬く、骨太な感じのクルマが多いなかにあっては、という条件付きだが。
新型は、明らかに方向性が異なる。先代より広く見え、敏捷性も上だと思えるが、サスペンションのトラベルは短くなり、路面変化への対応が能率的になった。フラットさとレスポンスのよさはみごとなもので、連続するコーナーを活発に駆け抜けてみると、正確さと安定性を感じられる。ドライバーへの訴求度は、いまなお抜きん出ているフィエスタにこそ敵わないが、それを除けばこのクラスにほぼ敵はない。
ルノーの電動パワーステアリングは、先代より重く、切りはじめの効きがクイックに調整された。低速域ではオーバーアシスト気味だが、速度が上がるとフィールと安心感が増し、高速コーナーでの位置決めにも自信が持てるようになる。そして、外輪に激しく負荷をかけている時にもグリップレベルの残り具合を試すこともできる。
サスペンションはロールだけでなく、ピッチやダイブも抑えており、過激な加速やブレーキングの際にもスタビリティは高い。追い越し車線を走るペースでも、ハンドリングの安定感は安楽な領域にある。
多くの点で、このクリオは大きなクルマ並みの走りの質を備えたスモールカーとなった。古き佳きフランス車のデリカシーや楽しみの要素は幾分失ったものの、日頃乗っていてよりわかりやすい利点を多く手に入れた。