【奥深きカモフラージュ】クルマの試作車の偽装 パターンはさまざま 深い役割も
公開 : 2019.12.21 05:50 更新 : 2019.12.21 12:16
プロトタイプ車両ではお馴染みのカモフラージュですが、そのデザインにはさまざま工夫が凝らされていることをご存知だったでしょうか? 今回は先月正式発表されたばかりのアストンDBXのカモフラージュの秘密に迫ります。カモフラージュには深い役割が込められているようです。
カモフラージュの目的
家にクリスマスツリーが飾られているなら、ツリーの下にプレゼントの箱は置かれていないだろうか?
プレゼントであればきらびやかな包装紙でラッピングされているはずであり、置いてあれば必ず気が付くに違いない。
だが、中味の予想はついても、12月25日の朝、実際にラッピングを解いてみるまでは、実際に何が入っているかを知ることは出来ない。
そして、相当大きなツリーでもない限り、まさかその下にアストン マーティンDBXが置かれていることなどない。それでも、ラッピングが施された姿をうっとりと眺めながら、その中にはどんな真の姿が隠されているのだろうと思いを巡らすことになるだろう。
だが、サム・ホルゲートが彼の仕事を完ぺきにこなしていたとすれば、この新型SUVが先月正式発表されるまで、誰もその真の姿を知ることは出来なかったはずだ。
新型ヴァンテージといったニューモデルを担当していない時には、ホルゲートはアストンのカモフラージュフィルムのデザインを行っている。
自動車業界ではよくあることだが、最初は新型モデルのスタイリングをカモフラージュするというシンプルな目的で始まったデザインだったものの、いまではどれだけひとびとの注目を集めることが出来るかを競うようにまでなっている。
カモフラージュの目的というのは、新型モデルの存在を覆い隠すことではない。
黒と白の渦巻き模様や、最近では明るいパターンがよく使われるようになっているが、明らかに注目を集めるフィルムで車両をカバーする目的は、決して人目を避けるためではないのだ。
原理はシマウマ?
ではその目的とはなんだろう?
おそらくはシマウマと同じだ。その白黒の縞模様が捕食者の目をごまかし、その不揃いなラインによって幻惑された肉食獣たちは、シマウマがどちらに逃げたか分からなくなってしまうのだ。
この見解に異を唱えるものもいるが、だからと言ってこの「幻惑迷彩」が使われなくなったわけではない。
第1次世界大戦では、ドイツ軍が誇るUボートの指揮官を惑わそうと、連合国軍は軍艦を太く明るい縞模様でペイントしている。
公道でのテストが始まると、デザイナーたちは自らのデザインが人目に付くことを覚悟しなければならないが、細かなデザインを隠すために、カモフラージュが使われることになるのだ。
「お陰で多少は安心することが出来ます」と、ホルゲートは言う。
さらに、決して単にサプライズを残しておくだけのものでもない。主要なデザイン的特徴に関する知的財産については特許申請が行われるため、自動車メーカーでは特許が承認されるまで、そうしたデザインは人目につかないようにしておく必要がある。
最初のプロトタイプが公道テストを始めると、DBXのようなモデルであれば、「アストン初のSUVが公道に姿を現したということを隠すことは出来ません」と、ホルゲートも認めているからこそ、どうやってカモフラージュがデザインされたのかを知りたいのだ。
公道に出れば写真が撮られ、ネット上やAUTOCARのようなメディアに登場することは分かっている。
だからこそ、こうしたカモフラージュは、「アストンやパートナーのロゴが人目に触れる素晴らしい移動広告」になるのだとホルゲートは言う。「そのすべてが多くの期待に繋がるのです」