ロードテスト MG ZS ★★★★★★☆☆☆☆
公開 : 2019.12.14 11:50 更新 : 2020.01.06 01:34
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
自動車業界に押し寄せるエンジニアリング合理化の波、その実例にまたひとつ加わった。ZS EVには、コストカットの痕跡が見て取れる。その中国製プラットフォームは、あらかじめ電動化への対応が織り込まれてはいるが、内燃エンジン搭載モデルと共有しているのだ。
フロアに敷き詰められているバッテリーは、44.5kWhのリチウムイオン。温度上昇を抑えて航続距離の減少を防ぐため水冷式とされ、実質的に利用できるキャパシティは42kWhだ。
一般的にエンジンルームと呼ばれる鼻先の空間には、143psの同期電動モーターが搭載される。現在のZSのラインナップでは、これがもっともパワフルなパワートレインだ。
日産ジュークやヒュンダイ・コナと競合する小型クロスオーバーとしては、4WDが用意されていなくても驚くには値しない。それはZSの全仕様にいえることだが、EV版に限っては回生ブレーキのレベル変更と走行モードの3段階切り替え機能が備わる。
そのほかの構造は、このセグメントにありふれたもので、EVでもエンジン車でも、目新しい要素は見当たらない。ステアリングは電動アシスト式で、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。シャシーはスティール素材のモノコックだ。
かなり大きなバッテリーを積むことの多い電動SUVの基準からすれば、ZSの車重は比較的軽い。MGの発表値は1534kgで、テスト車の実測値もそれにかなり近い。
おそらく、もっと重く、価格も高かったなら、より大きなパワーソースの恩恵を受けられたはずだ。WLTP混合モードの航続距離は262kmで、480km近いテスト値を謳うキアe−ニロをはじめとするこのセグメントのライバルたちに及ばない。
いっぽう、充電の特性は2019年時点の当たり前なレベルで、グリル部にCCSとタイプ2のポートを備える。50kW急速充電器なら、30分ほどで160km程度走れる電力をチャージできる。だが、キアなどでは使用できる100kW充電には未対応だ。