フロントライン MG LE50 プラス
公開 : 2013.08.06 17:00 更新 : 2017.05.29 18:08
■どんなクルマ?
アビンドンをベースとしたフロントライン・デベロップメンツが製造するMG LE50だ。そのスタイルは明らかに旧いMG-B GTのリプロダクションで、ベーシックなモデルは£52,700(793万円)というプライスが付けられている。今回試乗したプラス・トリムは£55,000(828万円)、さらに幾つかのオプションを加える£60,000(900万円)近い価格となる。
エンジンはMX-5 GTに搭載されるマツダ製の2.0ℓが搭載され、そのパワーは238bhp/7400rpmを誇る。オーメックスのイグニッションとフューエル・システム、そしてフリアー・カムシャフトと各シリンダー毎に設置されたスロットル・ボディなどでチューニングされている。その結果、ノーマルの212bhpよりもより大きなパワーをもたらしているのだ。
このLE50は、名目上は1968年製のクルマとして扱われるため、エミッションはユーロ4のレギュレーションが採用される。そのため、触媒コンバーターなどは必要としない。その結果、24.1kg-m/4200rpmというトルクが可能となったということもできる。
このフロントラインLE50は、既に26台の注文を受けているという。既に発表後半世紀が経っているクルマではあるが、そのボディ・シェルはモーター・ヘリテッジから新品が供給されているという。
しかし、縦軸の剛性など1960年レベルであることは確かだ。さすがに、サスペンションは、旧いレバー・アーム式のダンパーというわけにはいかなったようだ。フロントはダブル・ウィッシュボーンという形式は受け継がれるものの、まったく新しいクロス・メンバー、ハブが採用され、コイルオーバー・ダンパーが装備され、ジオメトリーも見直されている。また、リアもライブ・アクスルという形式はそのままだが、4リンクとパナール・ロッド、スプリングが新しくされ、こちらもコイルオーバー・ダンパーが装備される。また、ブレーキは、より大きなディスク・ブレーキが4輪に配されることとなる。
■どんな感じ?
美しい本革が装飾されたインテリア・トリムと、オリジナルよりも遥かに多い遮熱材と防音材が採り入れられているにも関わらず、その重さは941kgに過ぎない。そして、そのウエイト・バランスは、4つのダンロップ・ブランドの15インチ・アルミ・ホイールにほぼ均等に荷重される。タイヤは、ジャガーDタイプのレーシング・タイヤのようなルックスを持つ195/65サイズのヨコハマCドライブ2が履かされている。
プラス・トリムは、スタンダード・トリムに加え、より強力なブレーキ・パッド、プレート・タイプのリミテッド・スリップ・デフ、レブリミットよりも500rpm低い7300rpmで点灯するアップシフト・ライト、フロント20mm、リア15mm低くされたサスペンションなどが特徴だ。スタンダード・モデルでもスプリングはアジャスタブルなどで車高を落とすことは容易だ。
MG LEをドライブしていて最初に違いを覚えるのは、そのエンジン・サウンドと6速のギアボックスだ。スタイルこそMG-Bなのだが、その奏でる音は紛いもなくマツダのものだ。また、もうひとつ違いがあるのが、オリジナルと同じブラック・スティール製のダッシュボードの下から流れ出るエアコンの風だ。
MG LEはメタリック・グリーンのノーズをオープンロードの高速コーナーに向ける。すると、最新のフロント・エンジンのロータスよりも素晴らしい精度と粘り強さを見せる。コーナーの頂点に向けて、MGは完全にバランスのとれた姿勢を見せ、その立ち上がりでは僅かにテールを沈ませ、ステアリングのコントロールだけで綺麗に加速を始める。驚くことにそのステアリングは、パワー・アシスタントもなく、オリジナルのMGのままだが、フレンドリーで直感的で大きな信頼性を持っている。
サスペンション・ジオメトリーもより高いギアでコーナーを抜けるのに則しているようだ。また、オプションの電動パワー・ステアリングを装着してもそのフィーリングは非常に自然なのである。
エンジン・パワーは、1トンを切るウェイトには予想する以上に充分で、オリジナルのスミスのレブ・カウンターの針は一気に駆け上がる。5000rpmから7000rpm台中盤までのパワーは気持ちがいいほどで、トルクもより強く感じられる。
スピードメーターはスケールが書き換えられ、170mph(273km/h)スケールとなっている。MG-Bが、そのスケールと思うかもしれないが、ブランディングスロープのテストコースでは、精密な速度計測でも240km/hを上回る数値をマークしており、実質には257km/hにも届くことが容易に想像がつく。また、その軽い車重ゆえ、0-100km/h加速も4.9秒と俊足だ。
このクルマは本当に活発なモデルであり、オリジナルのMG-Bと比較することはほとんど無意味だ。
マイナス面を指摘するとすれば、リア・アクスルに落ち着きがないことで、特にハイスピードで落ち着いた乗り味をもたらすためには、滑らかな道を必要とすることぐらいだろう。
■「買い」か?
LE50プラスをドライブした後、スタンダードなLE50もドライブした。これはLSDを持たず、高回転での気持ちよさはない。その反面、エンジンはスウィートで、乗り心地も穏やかだった。確かに、大部分の道では、スタンダード・モデルの方がコンフォータブルなモデルであるが、サーキットなどで愉しむとなればLE50プラスの方が上だった。
いずれにせよ、毎日ドライブすることができ、信頼性に富む、クラシック・スタイルのスポーツカーであることには間違いない。
(ジョン・シミスター)
フロントライン MG LE50 プラス
価格 | £55,000(828万円) |
最高速度 | 257km/h |
0-100km/h加速 | 4.9秒 |
燃費 | NA |
CO2排出量 | NA |
乾燥重量 | 941kg |
エンジン | 直列4気筒1999cc |
最高出力 | 238bhp/7400rpm |
最大トルク | 24.1kg-m/4200rpm |
ギアボックス | 6速マニュアル |