ミニ・クロスオーバー
公開 : 2013.08.07 10:59 更新 : 2017.05.22 14:11
小さくないMINI、導入
今月から長期テストレポート車を新調した。MINIクロスオーバーである。ハッチバック、カブリオレ、クラブマンに続くMINI第4のモデルとして誕生したクロスオーバーは、日本発売が2011年1月からだから、すでにお馴染みのモデルである。
クロスオーバー上陸後も、クーペやロードスターが加わり、MINIファミリーは着実にモデルラインナップを拡充している訳だが、クロスオーバーは唯一4枚のドアを備えるモデルだけに、MINIブランドの新しい可能性を秘めているともいえる。ハッチバックやクラブマンは後席を備えるものの、2ドアモデルしか選択できなかった(クラブマンは運転席側が観音開きだから3ドアだが)。そんなMINIにさほど魅力を感じていなかったユーザーが注目し、新たなユーザーを獲得しているのはご周知のとおり。
実はこれまで、クロスオーバーにきちんと乗ったことがほとんど無かった。撮影でクーパーSを少し動かした程度。“小さくないMINI”とはいったいどんなものなのかと、以前から気になっていたところだったのだが、今回ご縁があって、レポート車導入の運びとなった。グレードはクーパー。ONEとクーパーSの間に位置づけられる、真ん中のグレードである。
本誌締め切りの約一週間前に編集部に来た関係で、まだ満足にドライブできていない。今回はレポート車の仕様を中心にご紹介させていただきたい。
さて、MINIといえば内外装の多彩なオプションも大きな特徴。レポート車の装備するオプションは以下のとおり(カッコ内は価格)。
●サーフ・ブルー・ボディカラー(0円)
●カーボン・ブラッククロス・コスモス(0円)
●シルバー・アロイ・ホイール(0円)
●クローム・ライン・インテリア(2万2000円)
●ホワイト・ルーフ&ミラー・キャップ(0円)
●インテリアカラー・ダーク・タバコ(0円)
●カラーライン・ピアノ・ブラック(0円)
●スモーカーズ・パッケージ(3000円)
●ホワイト・ターンシグナルライト(1万4000円)
オプション装備合計で3万9000円、車両価格312万円(A/T)と合わせて315万9000円というのがこのレポート車の価格となる。
ハッチバック(クーパー)に比べて365mm長く、105mm幅広く、120mm高いボディは、さすがにMINIと呼ぶのがためらわれるもの。ちなみにホイールベースは130mm長い。実際に目の当たりにすると、数値以上のサイズを感じさせる。エンジンは他のボディスタイルのクーパーと同様で、122ps/16.3kgmを発する自然吸気式の1.6ℓ直列4気筒。トルコン式の6段A/Tを組み合わせている。アイドリングストップ機構は無い。公表されている10・15モード燃費は13.4km/ℓとのことだが、果たして実用燃費はどんなものなのか。
勉強不足を感じたのがタイヤだ。MINIにはボディタイプを問わず、全車ランフラットが標準装着されているのだと思っていた。調べてみると、クロスオーバーにはクーパーSの4WD仕様を除けば、普通のラジアルタイヤを履くという。スペアタイヤは搭載されず、クロスオーバーの場合、パンク修理キットが助手席シートの下に搭載されている。
これはこれでアリ!?
導入から約一週間、街乗り7割、高速3割で約240km走行した第一印象は、驚きこそ無かったものの、これはこれでアリかと思った。エンジンに特筆すべき点は無く、いたってフツウだ。車重が1360kg(ハッチバックのクーパー比で230kg重い)もあるのだから、もう少しトルクがあってもいいのではと感じるシーンもなくはないが。エンジン音は少し大きめで、6速100km/h巡航時にレブカウンターの針は2500rpm辺りを指すのでそれなりである。さらにボディ形状で想像できるとおり、風切り音もそれなりにあるから、高速走行時はなかなかのボリュームだ。
MINIの走りを表現するときによく使われる“ゴーカート・フィーリング”は、少なくともいまのところあまり実感していない。○○スカイラインなどに連れ出してみればその有無がわかるのだろう。有ればいいというわけでもないが。
さすがにキャビンの広さには感心する。とくに後席足元は十分なゆとりがあり、シートの仕上がりも良好だから長距離でも疲れ難そうである。
マイナスイメージもなくはないが、キャラクターや価格などを総合すれば、こんな選択肢もあっていいのではないかと思い始めている。今後、付き合いを深めていけば、それまでの印象が変わる点もあるかもしれない。楽しみである。
これから約半年に渡り、様々な角度からレポートしていくつもりだ。とくに次期購入リストに挙がっているなら、ご注目いただきたい。
(AUTOCAR No.111 2012年6月26日発売号掲載)
モアパワー希望
今月は日常的にクルマを使うドライバーが走る、わりと平均的な距離を重ねることができた。ワインディングに連れ出す機会はなかったが、東名で東京〜御殿場の往復をこなすなど、一般的な使い方はできたというわけだ。で、強く感じたのがやはりもう少しパワー(トルクも)が欲しいということ。
加速感よりも気になったのがエンジンサウンドだ。1360kgのボディを122ps/16.3kgm仕様の1.6ℓ自然吸気式エンジンで走らせると、巡航スピードに乗るまでの加速は、それなりに回転数が上がってしまう。高速道路で100km/h巡航(6速)するときは、およそ2500rpm(タコメーターに細かい目盛りが無いので推測)にも及んでしまう。イマドキの過給器付きダウンサイジングエンジンを搭載する同クラスのエンジンであれば、2000rpmどころか1500rpm程度しか回らないものもあるだろう。この回転数の低くないエンジンサウンドが正直、いま一番気になっている。
加速そのものも、もう少しパンチが欲しい。テスト車のクーパーは上級のクーパーSとベーシックグレードONEの中間に位置するグレード。試しに各グレード(AT仕様)とスペックを見比べてみた。まずはクーパーS。ターボ過給付きエンジンのスペックは184ps/24.5kgmで車重は1390kg。馬力荷重比は132.4ps/t。次にONE。エンジンはクーパーと同じ自然吸気式で98ps/15.6kgm、1350kg、72.6ps/t。そしてクーパーが122ps/16.3kgm、1360kg、89.7ps/tである。
クーパーが中間に位置することに忠実だった場合、スペックも中間くらいなはず。という仮定でクーパーSとONEのスペックの平均値を出してみると、141ps/20.1kgm、1370kg、102.9ps/tとなった。この値と現実のクーパーを比べると車重が10kg軽いものの、エンジンのスペックは少しもの足りない。ちなみに車両価格は上から順に365万円、312万円、280.2万円。クーパーSとONEの中間値は322.6万円だから、現実のクーパーは安めの設定である。
とまぁ数字を比べてみたわけだが、これはあくまで机上論。それはわかっている。だが、である。例えば既存の自然吸気ユニットでのスペックアップが難しいのなら、低圧ターボを付加したエンジンを載せて140ps/20kgmくらい引き出せれば、もう少しバランスがよくなるかもしれない。モデルチェンジの際はぜひ検討していただきたいものだ。
そんなことを考えてしまったクーパーの加速だが、のんびりゆったり気分で走るぶんには問題ない。MINIというブランドから想像するキビキビとした走りのイメージは、クーパー・クロスオーバーには当てはまりにくいことを実感した。クロスオーバーで少しでもキビキビした走りを望むならクーパーSが必須となりそうだ。
このひと月ほぼ毎日を共にしてみるとクロスオーバーというモデルは、例えばルノー・カングーのように、家族や仲間と荷物満載で出掛けるピープルムーバー的な使い方が相応しいと感じた。BMWが手掛けるMINIだけに、ついつい先入観を抱いていたようである。
ようやくクーパー・クロスオーバーというクルマの本質が肌感覚でわかりはじめた。
(AUTOCAR No.112 2012年7月26日発売号掲載)
良好なパッケージング
4ドアの実用性や利便性を優先してクロスオーバーを選ぶからには、使い勝手が良くなければ“小さくないMINI”に乗る意味はさほどない。後席の居住性が良好であることはすでに報告済みだが、今回はラゲッジスペースのアレンジ含めたクロスオーバーのパッケージングを検証してみたい。
レポート車は標準タイプのリヤシートだから後席は2名掛け(オプションで3名掛け仕様も選択可能)。独立したシート形状を持つ点、そして中央を貫くコンソールのおかげでいわゆるカップルディスタンスが十分確保されている点から、大人2名でも快適な空間が保てる。ヘッドクリアランスも1550mmの全高から想像できる納得のレベルだ。感心させられるのは足元空間のゆとり。ハッチバック仕様より130mm、クラブマンより50mm長いホイールベースは伊達ではない。身長176cmのドライバーが前席でポジションをとっても、後席には充分といって差し支えないスペースが残されている。リヤシートの乗員にとって前席シートバックまでの距離は、左右のスペースとともに、寛げる空間か否かを判断する重要なポイントとなるだけに、高く評価したいところ。ちなみにリヤシートそのもののデキはどうかといえば、シートバックの可倒機構を考慮すればサイズや座り心地はまずまずといったところか。機会があれば長距離での印象も報告したい。
一方のフロントシート。ハッチバックやクラブマンより着座位置が高く、フロントウインドウまでの距離が遠い関係で、運転感覚はMINIの中でも独特だ。だが、インテリアを構成する各パーツ(ステアリングやメーター、センターパネルなど、ボディサイズに影響されないもの)は他のMINIと共有していると思われるので、最初は少し不思議な感覚にとらわれる。ハッチバックなどと比べて室内高があるため、前席も窮屈な感じはしない。総じて、大人4人が快適に移動できるMINIとしては、十分に満足できるパッケージングを達成しているといえるだろう。
ラゲッジスペースはどうか。掲載写真のように後席シートバックを前倒しして荷物を積み込む場合は、着脱式のトノカバーを外さなければならない。トノカバーを装着したままリヤのシートバックを倒すことも可能だが、荷物の大きさや形状が制限されてしまう。トノカバー自体、重量の嵩むものではないから着脱は苦にならないが、荷物が多くなった場合は置き場に困ってしまいそうだ。
総合的にみればクロスオーバーのパッケージングは良好なレベルで、これならファミリーユースでも耐えられると思う。大人4人が満足に乗れるコンパクトカーはVWゴルフを筆頭に数多存在するが、MINIのデザインを優先して選んだとしても後悔することはないだろう。
話は変わるがフィアットが500の4ドアモデル、500Lを誕生させた。本誌41ページをご覧のとおり、横から見たフォルムはどことなくMINIクロスオーバーに似てはいないか。後席の可倒機構はクロスオーバーとは異なるが、2ドアベースの派生4ドア版を作ろうとすると、フォルムはクロスオーバーに行き着くということか。MINIと500は商品企画的にも通ずるものがありそうだし。フィアットも多少は意識したのかもしれない。
(AUTOCAR No.113 2012年8月25日発売号掲載)
十人十色
カラーや多彩なオプションを組み合わせることで、自分だけの1台が可能となるのもMINIの魅力。そこで今回は特別編として、クロスオーバーの内外装を1台プロデュースしたモータージャーナリストの九島辰也氏をゲストに迎え、レポート車とは違った表情をご覧いただきたい。
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ここ数年、英国に足を運ぶようになってからグッと身近な存在になったMINI。2009年には誕生50周年イベントに参加するためシルバーストーン・サーキットまで駆けつけたりした。おかげで伝説のMINI使いとして知られる名ドライバー、アルトーネン氏ともすっかり仲良し。サーキットで同乗走行なんかも体験させてもらい、幸せな気分にさせてもらったりした……。
そんなこんなで昨年はクラブマンをベースにボク仕様を1台つくらせていただいた。テーマは“オヤジのサーフィン車”。アイスブルーのボディにウッドパネルのインパネが60年代のカリフォルニアを思い起こさせる。昨年9月に宮崎で行われたサーフィンの大会に展示したので、お目にした方もいらっしゃるのではないだろうか。
で、今年は写真のクロスオーバーをプロデュースした。今回のテーマは“ロンドンなぅ”。今年すでに何度かロンドンに足を運んでいるが、そのとき街中で見かけた何台かのイメージを咀嚼し自分なりに具現化してみた。
具体的にどこがロンドンかというと、まずはボディカラー。チェルシーやサウスケンジントン、ノッティングヒルあたりじゃいま目立つクルマはほとんど黒か白。MINIもそうだし、アストン・マーティンやジャガー、レンジローバーもそう。それにアウディやメルセデスといった輸入車系もまんまソレだ。もちろん、メイフェアあたりもね。そう考えると、限定車“ロンドン・パッケージ”がホワイトボディなのもわからなくない。
そしてさらなる上級テクニックがブラックホイール。かつてはレーシーなイメージだけだったが、最近はオシャレな雰囲気が強まってきた。この辺は大西洋の向こう側からのトレンドかもしれない。ちなみに、ボクが選んだ5スター・ダブルスポークは18インチ。正直、標準の16インチよりはグッと硬く感じるが、このクラスの見た目としてはかなり良さげ。クルマ全体に力強さが生まれたと思う。
インテリアはホワイトレザーを基調にした。これは前回のクラブマンでかなり各方面から高評価をいただいたからだ。汚れやすいホワイトレザーシートはなかなかお目にかかれないのが現実となる。そしてインパネにはピアノブラックをデコレート。イメージ的にはここが“ロンドンなぅ”といった感じだ。予想以上に大人の雰囲気が漂う。
快適装備は電動サンルーフやマルチファンクションステアリング、それと高級オーディオHarman Kardonを付けた。オーディオにこだわるのが大人の余裕。どうです、かなりクールなクロスオーバーが出来上がったと思いませんか!?
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購入予定の方はぜひ参考にしていただきたい。次号は通常のレポートに戻り、お届けする。
(AUTOCAR No.114 2012年9月26日発売号掲載)
走りも独自の個性
当レポートがスタートして以来、初めてワインディングロードを走る機会が得られた。果たしてMINIらしいゴーカートフィーリングを備えているのだろうか?
いきなりだが結論から。シロクロはっきりさせるのならば、クーパー・クロスオーバーにそれは無かったと報告したい。MINIというブランドのクルマからイメージさせるゴーカートライクな走りは、HBやクラブマンなど、着座位置や重心の低さがもたらすダイレクト感が不可欠だと思う。当然クロスオーバーはSUV風味を効かし実用性も重視したモデルコンセプトゆえに、そもそも着座位置の高さからしてその要件を満たしていない。
走り出す前から結論は出ていたようなものだが、スポーティに走らせることが楽しくない訳ではない。他のMINIと同様にフロントにストラット、リヤにマルチリンクの形式を採るサスペンションは路面に努めて追従してくれ、走りを決して軽んじないBMW作のクルマを感じさせる。とくに後ろ足の粘りはなかなかのもの。ひとたびスピードが乗ればそれなりのリズムでコーナーをこなすのは難しくない。加速に強力なパンチがないので、コーナーの進入時に速度を落とし過ぎてしまうと脱出時にスピードを乗せにくい点は愛嬌か。とはいえ、このモデルの走りとしては充分だし、クロスオーバー独特の個性を走りの面でも演出しているともいえる。MINI=ゴーカートフィーリングという先入観を捨て、“ちょっとスポーティなSUV”という捉え方なら納得はいく。速くはないが。
ステアリングはギヤレシオが比較的クイックな設定。少しでもゴーカート感を演出しようと感じさせるのは、作り手側の意図するところなのか。だが、エンジンのスペックやサスペンションの設定とのバランスに貢献しているとは思えなかった。個人的にエンジンよりシャシーのほうが速いクルマは好きな方だが、このモデルのキャラクターを考慮するとステアリングレシオはもう少しマイルドな味付けのほうがマッチングはよさそうなもの。だが、そうしてしまうと今度は別の要素が欠落してしまうのだろう。オプションのスポーツサスペンション(4万円)を選択すると印象は違ったものになるのだろうが。
クロスオーバー以前のMINIを知っているのならば、走りに過度な期待は禁物だ。だがMINIに固定観念を持っていないのならば、クーパーの走りになんら不満を抱かないだろう。街乗り、高速いずれにおいてもパンチはないが充分な加速を披露するし、ピープルムーバー的なモデルとしてはむしろデキはいいほうだ。
クロスオーバーに少しでもスポーティな走りを追求するならクーパーSか、今後上陸するであろうJCWを選択したほうが無難であるのは明白。だが、“MINIであること”に加えて、そのなかでもっとも高いユーティリティを備え、そこに魅力を見出しているのならば、価格や装備を考慮してクーパーを手に入れるのはスマートな選択だと思う。実際に見かけるクロスオーバーの多くはクーパーだ(偶然かもしれないが)。むしろ選ぶ側に立ってみれば、一番の落ち着きどころとなるグレードのような気がしている。
(AUTOCAR No.115 2012年10月26日発売号掲載)
まずまずの高速燃費
クロスオーバーに限らず、MINIに乗っている、あるいはこれから手に入れようと考えているのなら、燃費はさほど重要視するものではないだろう。とはいえ、まったく気にならないかといえばそうでもない。何せ日常的に乗るとなればランニングコストとして、おサイフを直撃するわけで。MINIクーパー・クロスオーバーが次期愛車としてリストアップされている方にご参考いただきたく、今回のレポートは燃費をテーマとしたい。
当レポートがスタートして以来、毎月走行する距離の8割以上が街乗りで、先月レポート時点での平均燃費は9.6km/ℓだった。いくらMINIの中で大柄とはいえ、この手のモデルなら街乗りで10km/ℓは超えてほしいというのが率直な感想だが、全国のオーナーの方はいかがだろうか。
では高速メインではどうか。今月は東京から栃木の往復、約400kmを、高速9割以上で走ってみた。その走行だけで燃費を出してみたところ、13.6km/ℓに及んだ。走行した高速道路の状況は、往路・復路ともにわりと車両が多く、前方が詰まり減速を迫られるシーンが多いものだった。とくに燃費を意識するドライブはせず、流れに乗っての数値である。減速や再加速の頻度が高かった点を考慮すれば、まずまずの結果といえるだろう。別項のとおり、今月はこの走行によって11.0km/ℓに、トータルでも10.3km/ℓに伸びている。
MINIのオフィシャルサイト(mini.jp)を見てみると、10・15モードは17.8km/ℓ、JC08モードでは16.6km/ℓという数値が公表されている。実用燃費との開きは意外と大きい。走り方にもよるが。
今後、モデルチェンジを重ねていく度に燃費性能の向上も図られるだろう。開発サイドでは当然アイドリングストップ機構やA/Tのさらなる多段化など、想定される策はいろいろと視野に入れていることだろうが、ぜひとも搭載エンジンそのものの見直しも検討してもらいたいもの。とくにクロスオーバーの場合は他のMINIより車重が嵩む(クーパーA/T仕様で1360kg。ハッチバックの同グレードより230kg重い)。クーパーSならクロスオーバーにもターボは載るが、クロスオーバーにはクーパー、ONEにも低圧仕様でも構わないので、ターボを載せてほしいと思う。というのも、低速トルクの物足りなさが走りのパフォーマンスの面でも燃費の面でも、印象をひまひとつなものにしているのではないかと感じているからだ。
ちなみに高速での走りの印象は、長短両面があった。重めに躾けられた電動パワステは直進時のすわりがよく、少し高めの着座位置も含めて運転がラク。一方、ボディスタイルからお察しのとおり風切り音が大きめだったり横風の影響を受けやすい。足まわりでは、205/60R16サイズのタイヤはフラットな路面では高い安定感につながるが、継ぎ目や段差は割りとしっかり拾う。後者はタイヤというよりボディやシャシーの影響だが。
話は逸れたが、街乗り中心で9.6km/h程度の燃費で単純計算した場合、1タンク(47ℓ)の走行可能距離は約450kmとなる。この数字の捉え方によって長く付き合えるか否かの判断材料になることは間違いなさそうだ。くどいようだが担当としてはあと1割、いや5%でも欲しかった……。
(AUTOCAR No.116 2012年11月25日発売号掲載)
頼もしさも小さくない
6月に導入したMINIクロスオーバーは約半年間で7300km余りを走り、今月で長期テスト車両としての任を退くこととなった。
小さくないボディのクロスオーバーはMINIとはいえないのではないか、などと当初は思ったものだった。だが半年を共にしてみると独自の魅力を実感することができ、徐々に見直すようになった。その魅力とはすなわち、大人4名が快適に乗降・乗車できるという実用性である。これはクロスオーバー以前のMINIには無かったし、ファミリー層でもファーストカーに成り得る新しいカタチとしてMINI の可能性を大きく広げたモデルといえる。実際にテスト期間中も、急遽後席までゲストを招くシーンが多々あった。後席でも快適に寛げるクロスオーバーならドライバーも安心だ。小さくないからこそ得られる頼もしさ。その魅力は決して小さくなかった。
本国ではマイナーチェンジ版が発表され、パワーウインドウスイッチが各ドアに設置されるなど、若干の変更を受けている。その次のモデルチェンジでは、ぜひともパワートレインに手を入れていただきたい。動力性能や燃費の面では現状、ライバルに遅れを取っていると言わざるを得ない。当然、造り手側も次期型の計画メニューに盛り込んでいると予想できるのでこれ以上は触れないが。
そしてもうひとつ期待したいのがナビシステムである。これはMINIの他のモデルにも言えることだが、MINIにナビを付けようとする場合、販売店レベルではオプションでインパネ中央のメーターパネル下部に社外品をセットするか、ポータブルナビをエアコンルーバーに装着する方法(いずれも銘柄は指定)、そして先に発表されたiPhoneとのリンクを可能にするシステムが選べる。それ以外ではPNDを独自に取り付けるしかない、などが現状だ。本国仕様ではビジュアルブースト(各種情報を表示可能な専用メーターパネル/12万円のオプション)にナビ機能も持たせているようだが、日本仕様もぜひ導入して欲しい。街で見掛けるMINIにはポータブルナビを取り付けているケースが多いが、デザインコンシャスなインテリアデザインがこれでは台無しだ。
MINIに乗るユーザーは個性的なデザインも購入動機のひとつになっているはず。BMWがMINIをプレミアムブランドと主張するなら早期の改善を望みたいところだし、BMWの“iドライブ”をなぜ活用しないのかと思うのだ。あんなにスマートなシステムをMINIならではのデザインで搭載できたらなおいいと思うのだが、いかがだろうか。もちろんオプションでいい。ちなみにBMW1シリーズに設定している“iドライブ・ナビゲーション・パッケージ”は25〜27万円(M135iは標準)。MINIを選ぶユーザーには受け入れてもらえる選択肢かと。インポーターによれば、本国でもiドライブの活用に関しては検討しているらしく、早ければその次のモデルチェンジで実現できるかもしれないとのこと。
今後への期待が膨らんでしまったが、それはクロスオーバーがMINIバッジを付けるモデルとしても、4ドアコンパクトモデルとしても高い資質を備えており、将来さらに熟成を深めていって欲しいと願いたくなるモデルであると感じたからだ。いま販売しているクロスオーバーを購入しても満足感の度合いはそれぞれだが、後悔だけはしないはずだ。
(AUTOCAR No.117 2012年12月26日発売号掲載)