【イタリア生まれのミニ】イノチェンティ・ミニ 60周年のお祝いに買ってみた
公開 : 2020.01.12 10:50 更新 : 2020.12.08 10:56
驚くほどきれいなエンジンとインテリア
1月末の金曜日。天気は雨。アイルランドのLCC、ライアンエアーに乗って筆者と妻のルパートは北イタリアのボローニャに入った。彼女はわたしの思考的なマネージャー役だ。
イル・カナーレ・ホテルにチェックインする。イノチェンティ・ミニ並みに個性的なホテルだ。インテリアには素晴らしい、というか特徴的な雑貨が並ぶ。適度に乱された、おしゃれな雑貨店のように。古いバイクにぬいぐるみ、カラフルなビスケット缶があちこちに置かれている。
翌日、町外れの荒涼とした工業地帯に向かった。自動車ディーラーや商業施設が点在する。そこに、イノチェンティが住んでいる小さな地下ガレージもあった。
クルマはイタリアの陽光のもとへ自走で出てくる。想像通り程度は良さそうだ。初めは気にならなかったが、細いマフラーからは少しラフなサウンドが響いている。
ボディはどこかの時点で軽く再塗装を受けているようだが、1970年代のブリティッシュ・レイランド製の自動車なら、新品でもこんなものだ。大きな凹みはないが、ボディパネルの隙間は綺麗とは呼べないほど大きい。もっとも1970年代のミニも似たりよったりだけれど。
ボンネットの内側は驚くほど綺麗。インテリアも衝撃的なほどに状態は良く、部品が揃っている。クルマの下に潜るには路面が濡れすぎていた。サイドシルは微妙な感じだが、この年代のビンテージ物っぽく、ボディの下側は黒のアンダーコートが塗り込んである。
1970年代のクルマなら補修は必須
見た目は良さそうだとしても、いくつかの修理は間違いなく必要だろう。初代のミニはもちろんだが、まったく補修作業が必要ない1970年代のクルマなど見たことがない。
出品者と一緒に工業地帯を道を試乗した。クルマは跳ね回り、うるさく、治すべき部分もなんとなくわかった。全体的には、ちゃんと走る方だ。今では入手困難な部品やボディパネルは綺麗なまま揃っている。
エンジン関係も入手が簡単なミニのAシリーズのコンポーネントと共有している。値段も安い。このイノチェンティ・ミニを60周年の記念プレゼントにしよう。英国に持って帰ることに決めた。
アルプス山脈を越えて自走して帰ったかって? 前もって積載車を借りておいて正解だった。
イノチェンティ・ミニについて
ベルトーネ社がデザインしたボディで、イノチェンティ・ミニ90と120が登場したのは1974年。初代のミニをベースとした、正式な派生モデルとしてのハッチバックだった。ローバー・メトロが登場する6年前のことだ。
レイランド・イノチェンティとして初めて生み出されたコンパクトカーで、初代ミニAシリーズのエンジン廻りなどがそっくり用いられている。ミニ90のエンジンは998ccで49ps、120のエンジンは1275ccで66psだ。
ミニよりボディはわずかに拡大され、全長は65mm、全幅は90mmほど大きい。ところがレイランド・イノチェンティは1975年に経営破綻。デ・トマソが経営権を握る。1982年にはダイハツ製のエンジンを搭載したイノチェンティ3が登場。英国とのつながりも終える。