【世界屈指のハイパフォーマンスSUV】レンジローバー・スポーツSVR 国内試乗

公開 : 2019.12.31 20:50  更新 : 2022.03.24 21:24

レンジローバーらしい乗り味

ボルスターの張り出しがいかにもオンロード志向であることを伺わせるヘッドレスト一体型のシートに座る。豊富な調整機能が用意されており、見た目のいかつさの割には窮屈さは感じない。

そして視界はレンジローバーのそれらしく、気持ち高めで前端見切りがよく、左右方向の抜け感も心地よい。

21インチアロイホイールを標準装備するが、オプションで22インチも選択可能。
21インチアロイホイールを標準装備するが、オプションで22インチも選択可能。

エンジンをスタートすると響き渡るドスの効いたV8サウンドにちょっと身構えるが、その走り出しは実に繊細だ。

適度な重みのアクセルペダルにゆっくり力を込めれば路面を優しく掴みながらじんわりと速度を上げていく。同様にブレーキも効きの立ち上がりが穏やかで、踏力にリニアに反応する。

悪路では一発のスリップが命取りになることをよく知る彼らならではの見識ある設えのおかげで、レンジローバースポーツSVRは低速域でも速度調整がのしやすく、街中でも所作麗しく乗員にも優しい加減速が容易に引き出せる。

また、オプションの22インチに件の極太低扁平タイヤを合わせていながら、低中速域での乗り心地が努めて穏やかなところもレンジローバーブランドらしさといえるだろう。

さすがに鋭い凹凸になるとタイヤの縦バネ特性が入力のインパクトを強めるが、路面のパッチや目地段差などでいちいち不快な思いをすることはない。

車体を大きく揺すられるうねりなどでのたっぷりしたサスのストローク感や支持剛性もまた、悪路耐性を土台にした足まわりの余裕を感じさせる。

見事なシャシーの味付け

低回転域からゆとりあるトルクを供してくれるスーパーチャージドV8は、回転の高まりと共にサウンドの凄みを増しながらグイグイとパワーを立ち上げてくる。

0〜100km/h4.3秒という数字などどうでもよくなるほど全開時の瞬発力は強烈だ。もちろんこれに類する、或いは上回るSUVもある。

室内にはパフォーマンスシートやSVRステアリングなどの専用装備が採用される。
室内にはパフォーマンスシートやSVRステアリングなどの専用装備が採用される。

が、レンジローバースポーツSVRはそれら仮想敵に比べると、シフトアップの瞬間に車体をグイッと前に持っていく押し込みの強さがある。

283km/hの最高速は完全に空気の壁に圧されたものだろうが、広域で駆動力をダイレクトに感じられるのは、この使い込んだエンジンならではの持ち味だと思う。

ともあれ悪漢ぶりが際立つ音質や音圧に高揚感が奪われがちだが、スポーツドライビングにおけるレンジローバースポーツSVRの一番の見どころは、2.4tの車重を見事に手なづけたシャシーの味付けの巧さだろう。

ピッチング方向の動きを巧く規制しながら自然なロール姿勢を作り出し、タイヤをベタッと路面に落ち着けて重量や重心を巧くなだめながら弱アンダー傾向で曲げていく。

路面状況に応じて駆動配分やサスレートなどを最適化するテレインレスポンス2にはワインディングのモードも設けられており後輪側の駆動力を最大化、さすがにオーバーステア方向に転ぶほどではないが、この車格としては破格にニュートラルなハンドリングを楽しむことも出来る。

このクルマではタイトコースを走り込んだこともあるが、サーキットには似つかわしくない視点に違和感を覚えつつも、見事なコーナリングマナーを備えていることに驚かされた。

記事に関わった人々

  • 渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。

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