【試乗 トヨタの商用車】新型プロボックス/サクシード 待望のハイブリッド

公開 : 2019.12.30 20:50  更新 : 2021.10.09 22:11

恩恵は走りの高級感

果たして、プロ・サクは乗ってどうなのか? と問われると答えに困ってしまうのだが、他のあらゆる乗用車との比較で言うのであれば「どこに面白さを感じれば良いのだろう」というのが正直なところだ。

そもそも、徹底したコストダウンの旗手であるトヨタ自動車の中でも特にシンプルを追求したクルマに味を見出すのは無理がある。プロ・サクは食品でいえば小麦粉とかサラダ油のような原材料的な存在なのかもしれない。

トヨタ・サクシードTX(ハイブリッド)
トヨタ・サクシードTX(ハイブリッド)

とはいえ、MT車両でワンメイクのレースが開催されているクルマなので、タフネスやクセのないドライバビリティ、軽い車重といった素材としての良さは豊富であり、今回はそこにハイブリッド・システムがプラスされている。

1.5Lガソリン・モデルの最高出力は109ps。だが、対するハイブリッドはエンジンが74ps、モーターが61psなので、システム総計ではかなりパワフルな計算になる。

だが実際に市街地を走ってみると、数値では表現できないハイブリッドならではの上質さが印象に残った。

“今さら”ではあるが、モーターでスゥーっと静かに走り出し、そこに滑らかに立ち上がったガソリン・エンジンのパワーがプラスされる所作は、洒落っ気の一切ないプロ・サクの見た目とドライバビリティに、これまでにない高級感を与えているのである。

サクシード 内装は?

おそらく営業車はストップ&ゴーが続く街中を走る機会も多いだろうし、帰り道はお積まれモードのドライブになることだって珍しくないだろう。そんな時ハイブリッドの賢い立ち振る舞いはストレスを取り除いてくれるに違いない。

前述のようにシンプルに徹したクルマなのだが、それは“余計な加飾が一切ない”というだけで、“こんな装備があったらいいのに”といったモノは実はてんこ盛りになっている。

トヨタ・サクシードTX(ハイブリッド)
トヨタ・サクシードTX(ハイブリッド)

その代表といえるのがダッシュ中央付近に仕込まれているインパネテーブルだろう。A4サイズのパソコンを置ける引き出し式のテーブルは、車内で過ごすお昼の時間にも大変重宝するはずだ。

またスマホなどを収納するマルチホルダーやドリンクホルダー、大型ドアポケット、買い物フック、小物入れ、スマホ充電用のUSB端子といった使えるギミックが少しの無駄もないように散りばめられている。

先ほどは“小麦粉やサラダ油”と表現したが、この日本的機能追及のスタンスは、昭和の時代に流行った多機能の筆箱を彷彿とさせる。

記事に関わった人々

  • 吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。

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