【偉大なる血脈】ミハエル・シューマッハの息子、ミック・シューマッハの現在地 目指すは最高の舞台 後編
公開 : 2020.01.19 18:50
7度のF1ワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハの息子、ミックは2019年シーズンをF2で過ごしました。メルセデスからの誘いを断り、フェラーリのドライバー・アカデミーを選んだ彼が目指すのは、もちろん父と同じF1ドライバーです。そんなミックのいまに迫ります。
真のカーガイ
「説明するのは困難です」と彼は素直に認める。
「自動車とはA地点からB地点へと運んでくれるものです。しかし、どんなクルマに乗っているかによって、同じA地点からB地点への移動でも、感じるものはまったく違います」
「フィアットに乗っているのか、フェラーリに乗っているのかで、大きな違いがあります。もちろん、フェラーリに乗って300km/hで移動したいと思いますが、そんなことはもはや許されません」
「ですが、それこそが情熱であり、ステアリングを握るモデルによってひとびとはさまざまな感情を引き起こされるものなのです」
フェラーリ458の名を出したとおり、ミックが真のカーガイであることに間違いはないが、EVにも心を動かされることはあるのだろうか?
「サーキットが舞台であればEVに興味はありません」と、彼は素っ気なく答える。
では、彼のレースに対するアプローチというのは昔ながらのやり方にあるのだろうか?
「その通りです!」と、彼は言う。
「カートをコースに持ち込んでいろいろなセッティングを試してみるのが好きなのです。キャブレターを薄くしてみたり濃くしたり、ジェットを最適なものに交換したりといったようなことです」
「自然吸気エンジンであれば、カートのようなセッティングの楽しみを味わうことが出来ます。速くする方法も目で見て理解可能です」
血筋は争えず
「ターボの場合はより複雑です。ブースト圧やちょっとしたセッティングにもコンピューターが必要になります」
レースであれテストであれ、サーキットでの周回そのものを愛した父と同じく、ミックも限界を追い求めることに喜びを見出しており、時にはその限界をすら超えることがあると言う。
「速くマシンを走らせるには、つねに限界に挑戦する必要があり、時にはそれを越えることも求められます」と、彼は真剣な様子で話す。
「ラップ全体を通じてそうしたドライビングを試してみて、それを何度も繰り返すのです。全身全霊を傾けてみれば理解できます。まさに病みつきになるほどの魅力です」
ミハエル・シューマッハの息子には、完全にモータースポーツとは無縁の人生はあったのか、それとも、彼の人生は予め決められていたものだと思うかを最後に質問してみた。
「奇遇です」と、ミックは笑顔を見せる。
「同じようなことを友人と話したことがあります。そして、お互いエンジンとは無関係の仕事を選ぼうと決めたのです。ですが、そんな仕事を見つけることは出来ませんでした」
「すべてがエンジンと関わりのあるものだったのです。そしてそれはこれからも変わらないでしょう」
「別の人生ですか? いまの人生に満足していますから…」
この親にしてこの子ありということだろう。