【FF最速……だけじゃなかった】新型メガーヌR.S.トロフィーRの狙いとは 前編

公開 : 2020.01.05 18:50  更新 : 2021.10.09 23:32

地元ドライバー起用の意味

そこで2019年中に新しいトロフィーRは、オーストラリアの国際格式サーキットであるベンド・モータースポーツパークでも、FF最速タイム2分14秒316を打ち立てた。

ロラン・ウルゴン自身ではなく、TCRオーストラリアにメガーヌR.S. TCRで参戦している地元ドライバー、ジェームズ・モファの手による記録樹立だった。

新型メガーヌR.S.トロフィーR
新型メガーヌR.S.トロフィーR

つまり、ウルゴンでなくても腕のあるドライバーが乗れば、タイムが出るクルマである、ということだ。

以上が今回の鈴鹿タイムアタックの前提であり、変わらない基調でもあった。

鈴鹿でタイムを詰めていくにあたって、2月に市販に近いプロトタイプでもテスト走行を行ったそうだが、その時からD1 GPやGT300、スーパー耐久などで経験豊富なドライバーである谷口信輝選手が、セッティングを手伝っていたのだ。

「ぼくが頼まれていたことはアドバイス云々より、鈴鹿のコースを知る自分と、トロフィーRをよく知るウルゴンさんで乗ってみて、クルマを仕上げていくやり方だったと思う」

「最初に乗せてもらった時は妙なセッティングで、乗った感じ、何をどう言うのか、ぼく自身が試されている気もした(笑)。でも以前のメガーヌR.S.トロフィーの時から、これを作ったヤツは凄いな、天才的だな、とは思っていましたね。FFでこんなに素性のよさを感じさせるクルマは他にない」

鈴鹿投入は右ハンで

タイムアタックの前週に航空便で着いたばかりの右ハンドル仕様は、027/500というシリアルナンバーをキックプレートに刻んだ、工場から出荷されたままの1台だった。

「右ハンドルで鈴鹿に挑むことに大きな意味がある」と、ウルゴンは述べる。全世界500台のうち、日本にも台数限定で割り当てられる予定だ。

タイムアタックに挑んだロラン・ウルゴン
タイムアタックに挑んだロラン・ウルゴン

「航空便で大急ぎで運んだせいで固定バンドに引っ張られたせいか、前輪は本来、0.1°のトーアウトなんだけどアライメントが狂っていて……」

「昨日はちゃんと走れなかったし、しかもエンジンもまだ走行3000km程度で、慣らし終えていない。ホントにアタックできるのかな」と、眠そうな目を擦るウルゴンは、珍しく頼りなかった。

別のスタッフいわく、今回来日できなかったシャシー・エンジニアのフィリップ・メリメ氏と、足まわりの問題をどう改善するか、夜遅くまでチャットで話し合っていたのだとか。

後編では、コース上の闘いをお届けする。

記事に関わった人々

  • 南陽一浩

    Kazuhiro Nanyo

    1971年生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。ネコ・パブリッシングを経てフリーに。2001年渡仏。ランス・シャンパーニュ・アルデンヌ大学で修士号取得。2005年パリに移る。おもに自動車やファッション/旅や食/美術関連で日仏独の雑誌に寄稿。2台のルノー5と505、エグザンティア等を乗り継ぎ、2014年に帰国。愛車はC5世代のA6。AJAJ会員。

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