ロードテスト ボルボS60 ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2020.01.04 11:50
結論 ★★★★★★★☆☆☆
メルセデスAMGをはじめとするパフォーマンス重視のサブブランドの売れっぷりを考えれば、ボルボがこのポールスター・エンジニアード仕様を設定したことに疑問の余地はない。
その第1弾となるプロダクトは、だいぶがんばったところが見受けられる。少なくとも、その気にさせてくれるデザインと、優れたボディコントロールはそうだ。
それは、プラグインハイブリッド・パワートレインの万能性もだ。この手のクルマとしてはユニークなメカニズムで、さらには最近のボルボらしい楽なドライバビリティと洗練された走りも備える。
そうした諸々を考えても、S60 T8 AWDポールスター・エンジニアードが、狙い通りのドライバーズカーになっているとはいいがたい。
ハンドリングとステアリングの正確さやコントロール性は、ボルボの新たなベンチマークといえるものだ。それでも、本当にスポーティと言えるライバルたちにはかなり後れをとっている。
4気筒のパワートレインは、しばしば速いセダンを定義づけるパフォーマンスもキャラクターも欠けている。複雑さのせいか、走りに直感的でなく不活発なところも見られる。
これはまだ難解なコンセプトの域を出ない。低エミッションと、卓越していないまでも強力なパフォーマンスは、特別なセダンをカンパニーカーにしようと考えるなら魅力的な選択肢だ。しかし、BMWやメルセデスAMGといったパフォーマンスセダン勢の立場を危うくするようなものではない。
担当テスターのアドバイス
マット・ソーンダース
ボルボが、どうしてデジタル計器盤にポールスター専用の表示モードを用意しなかったのか、ちょっとばかり疑問だ。コストをあまりかけずにインテリアをスペシャルに演出するなら、悪い手ではないと思うのだが。
リチャード・レーン
ステアリングとブレーキは、いつものボルボより一枚上手。もし、ハイブリッドシステムの重さがなければ、もっといい働きを見せたはずだ。実際、前輪駆動のT5グレードは、4万2000ポンド(約588万円)程度の価格を含めて、全方位で説得力のある仕様だと言える。
オプション追加のアドバイス
大人しい見た目と速さのギャップを最大限楽しみたいなら、ダークなグレー系や黒系のボディカラーを。乗り心地の悪化を危惧して、大きなホイールを避ける必要はない。その点で言えば、20インチでも上々だ。インテリセーフこと、ボルボの運転アシストパッケージは付けたい。
改善してほしいポイント
・トランスミッションに真っ当なマニュアルモードを。また、シフトクオリティを磨いて、ロックアップしやすいようにしてほしい。ここが、パワートレイン最大の弱点だ。
・内燃エンジンの個性とサウンドをもっと強くしてほしい。たとえ、合成音を混ぜるとしても。
・ESPの効きを弱めて、後輪モーター駆動のクルマに多く見られるトルクベクタリング機構を追加してほしい。