ロードテスト ボルボS60 ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2020.01.04 11:50
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
もしもルックスだけを採点するなら、満点を付けかねないところだ。ところが、話はそう簡単ではない。もっとも、ボルボが現在のデザイン言語を、小型サルーンへみごとに落とし込んだという点で、否定的な意見を述べるテスターはいなかったのだが。
プラットフォームは、XC40を除くほぼすべての現行ボルボが用いるスケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー、略してSPAだ。ディーゼルエンジンはラインナップされず、ガソリンのターボユニットとハイブリッドのみを設定。いずれもドライブEと呼ばれる2.0L直4ターボと8速ATがベースとなる。
標準モデルとなるT5仕様では、250psとほどほどのパワーで前輪を駆動。しかし、T8仕様ではスーパーチャージャーと専用部品を加えることで303psまでアップした。
さらにポールスター・エンジニアードは、ソフトとハードの両面に手を入れ318psへ引き上げ。そのうえ、後輪駆動用に独立した電気モーターを装備して、システム出力は406ps/68.3kg-mに達する。
そうは言っても、結局のところエンジンは4気筒しかない。6気筒を積むBMW M340iやメルセデスAMG C43に肩を並べるパフォーマンスを発揮できるのかは疑問だ。それについては、追々検証していこう。
当然ながら、ハイブリッド化は重量に響き、テスト車では2013kg。最近のスポーツセダンにおける競争力のある数字が1700kg前後なのを考えれば、かなり重いといえる。これはバッテリーとモーター、ハイボルテージの電気系によるものだ。
反面、それらの恩恵により43km/hほどのEV走行が可能となり、燃費やCO2排出量が抑えられる。これは、BMWやメルセデスとは異なるアプローチだ。
とはいえ、ポールスター仕様で印象的なのは、ソフト面よりハード面のグレードアップである。エンジンルームをまたぐアルミのタワーバーは、ボディ剛性を高め、フロントのよりシャープな操舵レスポンスを実現。サイズアップしたブレンボのブレーキも備わる。
そんな中でもっとも魅力的なアイテムが、ボルボと同じくスウェーデンで生まれたサスペンションのスペシャリスト、オーリンズが手掛けた調整式ダンパーだ。デュアルフローバルブと銘打ったテクノロジーにより、ダンパーフルードが伸び側でも縮み側でも同様に流れることが可能になる。
結果、タイヤの一貫した接地が保たれ、ハンドリングやトラクション、乗り心地が、一般的なストラットサスペンションに比べ改善されるという。ダンパーのレートは22段階の調整式で、フロントはストラットタワー上部のダイヤルを手動で操作しなくてはならないが、操作は簡単だ。いっぽう、リアはジャッキアップして、タイヤを外す必要がある。