ロードテスト ボルボS60 ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2020.01.04 11:50
走り ★★★★★★☆☆☆☆
1990年代半ばに850 T5が登場するまで、記憶に残るようなパフォーマンスというのはボルボとは無縁のコンセプトだった。それを変えたのが、5気筒を積む角ばった新型のセダンとワゴンで、おとなしいルックスを補うだけの速さを備えていた。
対して、合計406psのプラグイン・ガソリンハイブリッドを積むS60ポールスター・エンジニアードが、遅いと表現されることは決してないだろう。だが、過去のモデルのような意外さが、ここでは逆の意味で生まれる危険性がある。
強気な価格設定や力強いルックス、ピレリPゼロやゴールドのブレーキキャリパーといった装備にもかかわらず、0-97km/hのテスト値は5.4秒。0-100km/h=4.4秒という公称スペックにはだいぶ見劣りするのだ。
たしかに、テスト時の路面コンディションは湿り気味だったが、このダウンサイジングエンジンのパワーとトルクをすべてフロントタイヤの接地面へ叩きつけても、発進時のトラクションに問題はなかったし、そのことに驚いたテスターもいた。
実際、専用のローンチコントロール機能が備わっていなくても、このボルボはスタートラインから弾かれたように飛び出す。その要因は、電気仕掛けの後輪駆動メカニズムだ。
ところがそのあとは、本当に強力な加速をしあぐねる。そして、このクルマはドライブトレインのレイアウトの欠点を露呈する。
シフトアップはなかなかに滑らかだが、速度が上がり、太いシステムトルクを発揮する中回転域をタコメーターの針が有効にキープするようになると、加速力がわずかながら徐々に衰えはじめるのだ。
シフトチェンジするたび、ギアが完全に繋がっていないように思えることもある。アクスルからのショックによって、シャシーの電子制御デバイスが介入してトラクションを可能な限り最適化し続けているであろうことを教えているし、ひどく前に進まないような感覚にはならないのだが。
ドライコンディションなら、こんなフラストレーションはまず感じない。しかし、濡れた路面であってさえ、4WDを備える6万ポンド級のパフォーマンスセダンであれば、そこは300ps級のホットハッチよりずっと力強い加速を期待したいところだ。
コストと暗に示されたキャラクターは、このクルマのパワートレインをどう評価するかの判断材料になる。日常遣いでは上々だが、ややペースが上がり、EV走行の領域を超えたところでは、このレベルのクルマのオーナーはもっと多くを期待していいはずだ。それを望む機会も頻繁にあるだろう。
その点では、電気モーターのレスポンスは常にクイックだが、おおむねS60のパワーデリバリーは、ハイブリッドでない競合モデルに見られるような正確さとリニアさに欠けている。また、エンジンとモーター、トランスミッションが一連となっているハイブリッドのライバルは、もっとリニアなレスポンスと優れたドライバビリティを発揮してくれる。
負荷が上がると、このボルボのパワートレインには、競合車には豊富なとある要素のクオリティが不足していることを感じさせる。それは、サウンドのキャラクターだ。