ロードテスト ボルボS60 ★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2020.01.04 11:50

操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆

ズバリ言おう。このS60は、通常の高性能セダンに、運動性では及ばないところが見られる。

ステアリングの軽快さに欠け、メルセデスAMG C63やBMW M3コンペティションのようなグリップもない。このクラスでは唯一の前輪駆動ベースゆえに、後輪駆動セダンならばもっとパワーのないモデルにでも備わる固有のバランスをそもそも持ち合わせていない。

ボルボとしては楽しいハンドリングだが、ボルボらしからぬ暴れ方を見せることはない。
ボルボとしては楽しいハンドリングだが、ボルボらしからぬ暴れ方を見せることはない。    LUC LACEY

もちろん、それは予測できたことだ。そして、このS60のトップグレードの走りがダメだということはない。オーリンズの高性能ダンパーによって、ボルボにありがちな当たり障りない安定志向より上のレベルに引き上げられ、より楽しめるものになっている。

英国の道路においては、オーリンズのダンパーはもっとも寛容なセッティングに近づける必要がある。そうすれば、垂直方向のボディコントロールは、このクラスでは並ぶもののないほど巧みなものとなる。

このサスペンションが荷重移動を容易にすることもあって、ステアリングの修正は楽だ。そして、ステアリングの切り始めは、思いのほか楽しく正確だ。

リアに積んだ小型電気モーターが、コーナリング中のシャシーバランスを中和することも考慮すると、このクルマは熱い運転を裏打ちするのに十分な運動性を備えた、足取りの確かなスポーツセダンだといえる。

とはいえ、このクルマは決してボルボらしからぬものではない。公道上では、ほぼ疑問を呈するような動きをすることがない。これは、ESCを完全にカットできないことも一因だ。

このクルマは、どう運転されたいかが明確だ。クイックな、そして適切な操作を求めるのである。あるテスターは、このS60ポールスター・エンジニアードをうまく表現した。曰く、ルートが楽しくても、まずまずワクワクできるのは8kmくらいの間だということを除けば、理にかなったクルマだと。その走りは、それ以上でも以下でもない。

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