【驚きの体験】チーフテン戦車を操縦 売り先には注意 顧客には陸軍も 前編
公開 : 2020.01.25 18:50
興味深いエンジン
まず電力供給を担当する2.0Lディーゼル発電機に火を入れ、メインの燃料ポンプを起動するための3つのスイッチを操作してスターターボタンを押せば、19Lの排気量を持つ液冷2ストローク水平対向ディーゼルエンジンが目を覚ます。
このエンジンは気筒当りふたつの向い合うピストンを備えるという面白い構造をしている。それぞれのピストンには独立したクランクシャフトが与えられ、そのポジションに応じて排気ポートと吸気ポートの役割を果たす。
964psを発揮するこのエンジンでは、ハイオクからウォッカまで、その時入手可能なさまざまな燃料に対応している。
足元に目を向けると、アクセルとブレーキペダルは発見出来るが、クラッチとシフトレバーはどこにも見当たらない。
実際、バイク乗りであればチーフテン戦車を気に入るだろう。この戦車のシフトチェンジはバイク同様フットチェンジ式なのだ。そしてアップシフトはギアを押し下げることで行う。
だが、もしこうした操作に混乱しても大丈夫だ。ハッチの真下にあるダッシュボードのインストゥルメントパネルには、いま選択されているギアを表示する小さなメーターが設置されている。
チーフテン戦車には後進ギアがふたつあるのだから、このメーターの持つ意味は大きいだろう。
頼りは潜望鏡
ステアリング操作はドライバーの両サイドに設置されたレバーを押し引きして行う。右側のレバーを引けば、右側のキャタピラにブレーキが掛かることで右旋回を行い、左旋回はその逆だ。
だが、後進の際には行きたい方向の逆側のレバーを操作する必要があり、最初は頭を切り替えるのに苦労するだろう。
そして、レバーを引く際には思い切り力を込めて操作する必要がある。だが、どんなに強くレバーを引いても、巨大なブレーキディスクとパッドが焼き付きを起こすようなことはない。
いま乗っているこの車両のシートは一般的な形をしているが、標準仕様のチーフテン戦車の場合、ハッチが閉まった状態ではほとんど仰向けに寝ているような状態を強いられるとともに、視界は潜望鏡だけが頼りだ。
もしこの泥だらけのノーサンプトシャーの荒野が本物の戦場だったらと思うと、思わずゾッとする。
エンジンを始動させて1速ギアに入れてみたが何も起こらない。この戦車の巨体そのものが前進を阻んでいるのだ。
もう少しアクセルペダルを踏み込んでみると、この70tもの車重を誇るチーフテンMk.10戦車は、まるでここが練兵場であるかのように、ゆっくりと前進を始めた。
エンジン回転の上昇に伴い、少し足元のチェンジペダルに目を落としてから2速に入れてみた。すると、シフトメーターの表示も思い出したように2速へと切り替わる。