【トヨタが街をつくる】なぜ富士山麓に未来の街「WovenCity」2021年着工を決断した?
公開 : 2020.01.07 10:55 更新 : 2021.10.09 23:55
いま、トヨタとして大きな転換期
ラスベガスの会見で豊田社長は「どうして自動車メーカーのわれわれが街づくりをするのか?」という点にも触れた。
そのなかで、古典的な機織り機の写真を紹介しながら、トヨタ自動車の前身である豊田織機に触れて、トヨタが人の生活を基盤に考える企業だと強調した。
筆者は先日、久しぶりにトヨタ産業技術記念館(愛知県名古屋市西区)を訪問。同館内には、豊田佐吉が考案した機織り機を起点として、大型で複雑になる機織り技術の進化が見える化されている。
さらに、「トヨタ自動車のはじめて物語」として、トヨタのクルマ作りの原点を知ることができる展示が多い。
こうして、これまでのトヨタの歩みを振り返ってみると、トヨタがいま、次世代に向けて大きな転換期にあることが肌感覚としてわかる気がする。
その転換とは、機織り機からクルマへという変化とは比べものにならない、巨大な変革である。
豊田社長はこれまで、「自動車産業は100年に一度の大きな転換期」と呼んできたが、トヨタ自身が大転換するために、「WovenCity」は必要不可避なのだと思う。
トヨタは「総合生活サポーター」になる?
では、具体的に、トヨタはこれからどのような企業へと変わっていくのだろうか?
キーワードは、「総合生活サポーター」だ。2020年5月に本格実施される全国トヨタ系ディーラーの全店舗全車種併売に対して、トヨタ国内営業部がディーラー各社に対して使う言葉である。
トヨタはクルマを作り、そしてディーラーがクルマを売る。こうした製販分離の現状から、ビジネスモデルを大きく転換する中で、トヨタもディーラーも、人の生活に寄り添う企業体制になるという意味だ。
人の生活を集約するのが、コミュニティであり、そして町である。
富士山麓に出現する「WovenCity」には、約2000人が実際に生活しながら、トヨタがいかにして総合生活サポーターになるのかを考えていく。
ここまで大規模に自社として未来の街づくりに具体的な投資を行う自動車メーカーは、現在のところ、トヨタのみである。