【量産するワケじゃない】ソニーがEVプロトタイプを世界初公開 なぜ量産しない?
公開 : 2020.01.08 20:50 更新 : 2021.10.09 23:55
ソニーはEVの「ヴィジョンS」を世界初公開しました。ソニー側が重ねて「(クルマとしての)量産計画はない」と説明。ソニーの強みをあらためて考えるとともに、今後の焦点について桃田健史が考察します。
ついにソニーが動いた!?
ソニーがついに自動車メーカーになる。
ITと家電の世界的見本市CES 2020(2020年1月7日~10日:米ネバダ州ラスベガス)で、ソニーは「ヴィジョンS」を世界初公開した。
同車はEV(電気自動車)、かつデザインがテスラ・モデル3を意識したように見えるスポーティセダンであるため、発表当初、一部では「ソニーがついに自動車メーカーとしてEV量産」という見方もあった。
だが、ソニー側が重ねて「(クルマとしての)量産計画はない」と説明した。
一部報道では、「ヴィジョンS」の設計と製造は、カナダのマグナインターナショナルが請け負ったとされている。
同社は世界的な自動車部品大手で、オーストリアにある子会社のマグナ・シュタイアは欧州メーカー各社のOEM生産を行っている。BMW Z4とトヨタ・スープラの生産も同社が担う。また、EVについてはフォード・フォーカスEVなどの開発と量産を行っている。
マグナの他、ドイツのボッシュも「ヴィジョンS」の開発に関わったとされる。
こうしたEVに知見のあるメーカーと組んで、ソニーブランドとしてEVに参入する選択肢は十分にあるはず。
だが、現状でソニーとしてのEV量産化はNOである。
理由は、「もっと儲かる商売」があるからだ。
電池事業は儲からない?
EVというと、まず頭に思い浮かぶのが、電池とモーターだ。
EVはガソリン車などの内燃機関を搭載するクルマに比べて、駆動系の大型部品の点数が少ない。
そのため、駆動用モーター、インバーター、そして駆動用の大型電池の開発と供給を抑えることが、EV事業を牛耳る条件だと言われてきた。
電池といえば、ソニーは1975年から開発事業を始め、1991年には世界に先駆けてリチウムイオン二次電池を量産化している。
筆者(桃田健史)は、ソニーの電池開発初期に携わっていた関係者から直接話を聞いたことがある。
「テスラなどに利用されている円柱型の電池18650は、社内の開発呼称であり、まさか一般名詞化されるようになるとは思っていなかった」と当時を振り返った。
18650はパーソナルコンピュータ用としてソニー以外のメーカーでも大量生産され購入コストが安いことから、パナソニック製品がテスラ「ロードスター」「モデルS」「モデルX」にも採用された。
一方、ソニーは2016年7月、リチウムイオン二次電池事業を村田製作所に売却することで合意。将来の事業性が定まらなかったのだ。
これによりEVとのつながりも途絶えたように見えた。