【ルノー製ターボマシンの代名詞】5ターボ2と5ゴルディーニ・ターボ 後編
公開 : 2020.01.19 16:50 更新 : 2021.02.02 12:41
ルノー車らしく旋回軸はクルマの中心
ターボ2のトランスミッションのレイアウトは、リバースが左側に来るドッグレッグ。ゴルディーニと異なるから、注意が必要だ。トリッキーな5速MTは、3速から2速へ落とそうとすると、4速へとガイドされる。間違うとペースが一気に狂わされる。
コーナーの出口でターボを効かせて加速するという期待は、一気に削がれてしまう。回転数が落ちると、低回転域でのパワー不足にさいなまれる。コーナリング時の姿勢修正も不適切なら、悲惨なコースアウトへと結びついてしまう。
しかし正しく変速を決めれば、期待や評判以上に、リニアで力強い加速に包まれる。ルノー5ターボ2は、限界ギリギリまで攻めなければ、安全志向のクルマに感じられる。鈍さを感じない程度に、グリップ力は高い。
ドライバーもタイヤもシフトダウンの度にざわつき、ホイッスルを吹くターボが刺激的。首を持ち上げているのにも力がいる。回転数を上げているうちに、ステアリングホイールの不自然な角度は気にならなくなる。
旋回時の軸はルノー車らしくクルマの中心。初期の5ターボの癖は消えている。着座姿勢はアップライトで、クラッチのミートポイントは高すぎる。走らせていると、ルノー製のコンパクトカーに関係していることも忘れてしまう。
運転に夢中になれる望み通りのクルマ
ルノー5ターボ2は、運転に夢中になれる、望み通りのクルマだ。腕の立つドライバーなら、思い通りにドリフトも楽しめるだろう。濡れた路面なら、多くの人が楽しめるかもしれない。
やや大衆向けにトーンダウンされたルノー5ターボ2が登場した頃、レース用の車両にはツール・ド・コルス・キットが登場。グループB仕様のマシンとして289psを発揮するまでにチューニングされた。
さらにF-1エンジンを彷彿とさせる1.5LエンジンにDPVアンチラグ・システムが組み合わされた、究極のルノー5ターボ、355psのマキシも登場する。
ジャン・ラニョッティは1985年、マキシをドライブしてツール・ド・コルスに参戦。しかし4シーズン目のWRCでは殆ど勝利を上げることはできなかった。1986年にはポルトガルのレーシングドライバー、ジョアキン・モウティーニョが勝利を上げるが、観客3名の命を奪う事故も発生。グループBは終りを迎える。
全体的な勝率は決して高かったわけではないルノー5ターボ。グループBを席巻したスターモデルというより、マニア受けするヒーロー的な存在だといえる。
ゴルディーニ・ターボの実用性の高さや相対的な価格を考えても、ルノー5ターボは特別。恐らくどんな読者でも、2台が並んでいたら5ターボを選ぶと思う。もちろん筆者も。