【速度世界記録更新に向けて】ブラッドハウンドLSRの挑戦 目指すは4桁マイル? 前編
公開 : 2020.03.20 20:50
一度は頓挫したかに思われたブラッドハウンドの地上速度記録更新への挑戦ですが、昨年以来プロジェクトは急激な進展を見せています。昨年秋に行われたハイスピードテストで自信を深めているチームに話を聞きました。記録更新の先にはさらなる目標もあるようです。
プロジェクト復活
南アフリカの砂漠を舞台に行った昨年秋のハイスピードテストを終え、地上速度記録(Land Speed Record:LSR)のさらなる更新を狙うブラッドハウンドのマシンは英国でドック入りを待っているところだ。
今回のテストでは、アンディ・グリーンのドライブによって628mph(1010.67km/h)という速度を記録している。
「ハイスピード」といったが、ブラッドハウンドにとってはフルパワーの2/3での走行に過ぎなかった。
このテストは、ナミビアとの国境に近い南アフリカ北西部にある辺境の地、ハクスケンパンでの挑戦に備えたものだった。
いまから18カ月以内に、グリーンは自らが1997年にツインジェットエンジンのスラストSSCで記録した超音速の763.035mph(1227.99km/h)という地上速度記録の更新に挑むことになる。
ブラッドハウンドが目標とするのは800mph(1287.48km/h)以上のスピードであり、地上における最高速度記録の更新だ。
これがブラッドハウンドLSRについて知っておくべき最初のポイントかも知れない。
当初の目標は1000mph(1609.34km/h)に設定されていたが、いまこのスピードは記録更新を達成したあと目指すべき「フェイズ2」だとされている。
マイル表示で4桁に達するこの記録は、十分な商業的価値を持つとともに、大いに注目を集めることになるだろう。
そして、これがブラッドハウンドLSRに関するふたつ目の興味を掻き立てることになる。
これまでのブルーとオレンジに替えて、いまこのマシンのボディは、まるで「広告をどうぞ」と言わんばかりの真っ白な状態だ。
今回のプロジェクトは、ターボチャージャーメーカーMelettの元オーナー、イアン・ウォーハーストが2018年末の引退からわずか8日後に資金援助を申し出たことで救済されたのであり、以来プロジェクトは急速に前進している。
昨年秋のハイスピードテストが計画されたのは、その年の7月のことでしかなかった。
ブラッドハウンドLSRのチーフエンジニア、マーク・チャップマンと、元戦闘機パイロットであり、いまはチームの数学者としても活躍するグリーンによれば、ブラッドハウンドの挑戦とは、いかにしてマシンを走らせ、いかにドライブするかだと言う。
ブラッドハウンドLSRとは?
ブラッドハウンドの全長は、一般的なファミリーカーの約3倍にあたる13.5mにも達している。
「ボディ前半1/3はカーボンファイバー製モノコックであり、ドライバーのためのセーフティセルと高濃度過酸化水素タンク」が積まれているとチャップマンは話す。
タンクからの燃料は、ノルウェーのNammo社から供給される予定のロケットエンジンへと送られることになる。
いまのところ、ブラッドハウンドには戦闘機のユーロファイター・タイフーンから取り外した借り物の(まさにそのとおりであり、オーナーは返却を求めている)ロールス・ロイス製ユーロジェットEJ200エンジンが積まれている。
その出力は2765.1kg-mに達しているが、新たな一液式ロケットエンジンが加わることで、さらに1244.3kg-mのパワーアップが予定されている。
フロントセクションの後ろには、「燃料タンクを搭載するためのスチールとアルミニウムで出来たロワーシャシーがあり、その上にはジェットエンジンを保持するためのチタニウムとアルミニウム製シャシーが置かれ、フィンが取付けられている」という。
スラストSSCでは2基のエンジンを並べて搭載することで、ロールの発生を防いでいた。
「ブラッドハウンドがボディ幅の狭いデザインを採用しているのは、前面投影面積を減らすためです」と、チャップマンは話しており、「空気抵抗を削減すべく、可能な限り車高を下げています」とも言う。
「全幅は2.5mですが、フロント部分だけであればさらにボディ幅の狭いデザインを実現しています。決して極端にワイドなボディではありません」