【速度世界記録更新に向けて】ブラッドハウンドLSRの挑戦 目指すは4桁マイル? 前編
公開 : 2020.03.20 20:50
どう走らせる?
簡単ではないとチャップマンが言ったのには理由がある。荒野の真っただ中、厳しいコンディションのもと600mph(965.6km/h)でマシンを走行させるというのは、まさにその言葉通り並大抵の仕事ではない。
「晩春から初夏のカラハリ砂漠でテストを実施していますが、驚くほどの高温でした」と、チャップマンは話す。
「30℃台後半になることは分かっていました。43℃にも達することがあると想定していました。仕事をするには非常に厳しい環境です。以前は『大丈夫、われわれには冷たい飲み物がある』などと軽口を叩いていましたが、こんな気温のなか、マシンを準備するのは大変な仕事でした」
「EJ200エンジンを始動するためタービンを回しますが、非常に骨の折れる仕事です。さらに、1000m近い標高も問題でした。空気が薄いのです」
「そのため午前5時には現場に来て、午前5時30分には走行準備を終えるようにしていました。テスト時の最低気温は17℃でした。つまり例え夜明けであってもそれほど気温は下がらないということです」
1日16時間の仕事を終えたチームが滞在していたのは、車両基地から65kmほど離れた場所にあるハンティング用のロッジだった。だが、正確に表現すれば、干上がった湖の端に張られた単なる大型テントであり、ヨハネスブルクからは970km、もっとも近いスーパーマーケットからでも260kmも離れていた。