【速度世界記録更新に向けて】ブラッドハウンドLSRの挑戦 目指すは4桁マイル? 後編
公開 : 2020.03.22 20:50
一度は頓挫したかに思われたブラッドハウンドの地上速度記録更新への挑戦ですが、昨年以来プロジェクトは急激な進展を見せています。昨年秋に行われたハイスピードテストで自信を深めているチームに話を聞きました。記録更新の先にはさらなる目標もあるようです。
ロールが大敵
スラストSSCには2基のエンジンが並んで積まれていたが、その理由はそれだけのパワーが必要だったからだけでなく、その3.5mという全幅によってロールを心配する必要がなかったからだ。
「最高速記録に挑戦している時、決してロールなど感じたくはありません」と、グリーンは言う。
「複雑に向きを変える横風のなかで行った最初の数回のテストではロールを感じたので、『何かがおかしい』と思いました」
「もちろん、これは完ぺきなLSRマシンは決してロールしないという理想にも反していました」
「そのため最初はこの状態に慣れることが必要でした『正しい条件であればどんな感じなのか?』『こうした限界付近での必要なステアリングの操作量はどれくらいか?』『こうした問題は自らの自信を揺らがせるほどのものなのか?』といったようなことです」
「最終的にはこうしたロールもマシンの一部だと感じられるようになりましたが、最初はまったく慣れることができませんでした」
「速度記録を達成するには、横風にも影響を受けないハンドリングが必要だとチームには何度も話して来ました。非常に僅かなロールでも不安に感じるからですが、ふつうのクルマに乗ってそんな感覚を抱くことは稀でしょう」
「通常のサルーンモデルであれば、気付きさえしないようなロールです。レースカーでも問題にはならないでしょう。しかし、最高速度記録を狙うようなマシンでは、不快と言えるほどのロールなのです」
ステアリング操作が必要
ブラッドハウンドが走行する映像を見れば(ぜひそうして頂きたい)、グリーンが忙しそうにステアリングホイールを操作している様子を目に出来るだろう。
「速度の上昇に伴い、タイヤのメカニカルグリップが減少していきます」と、彼は言う。「そのため、マシンを真っ直ぐ走らせるには、しっかりとステアリングで進路を維持する必要があるのです」
「しっかりと」とは、5°しかないステアリングの切れ角のうち、3°を使うことであり、ブラッドハウンドでは目いっぱいのステアリング操作を意味している。
通常のファミリーカーであれば約45°の舵角だ。「それほど大きな操作量には聞こえないかも知れません」と、グリーンは言う。
「ですが、高速道路を走行中に45°の舵角を与えることを想像してみて下さい。さらに5倍、8倍、10倍の速度となれば、恐ろしいほどの操作量です」
「ですが、これが非常に高い速度で直線を走行するマシンで、進路を保つために必要な舵角なのです」
グリーンは「テストで感じたマシンの挙動を極端に恐れてはいません。次にドライブするのは同じマシンではないからです。ロケットエンジンが手に入り次第、車両の重量と重心位置に影響を及ぼすことになるモディファイを併せて行う予定です」