【フェラーリを夢見たアポロ計画】 アポロ3500GT コンバーチブル 前編
公開 : 2020.01.25 07:20 更新 : 2020.12.08 10:56
2年放置された車両を5万ドルで入手
「このアポロ・コンバーチブルのおかげで、特別なスポットライトを浴びることになりました。フェラーリよりも輝いていましたね」
アポロを製造するために、IMC(インターナショナル・モーター・カーズ)社を設立する。その役員の1人には、ハイデン・ゴードン博士も名を連ねた。自動車のエンスージァストでもある各物理学者だ。
ゴードンは株式の保有者でもあり、アポロ・コンバーチブルを購入し、長年保有していたそうだ。「彼がアポロのレストアを希望した時があり、わたしも手助けすることになりました」 と記憶をたどるブラウン。
「ところが彼はすぐに亡くなってしまい、クルマは2年間ほど屋外に放置されていました。最終的にゴードンの婦人が、近所のガソリンスタンドでクルマを売りに出したんです」
「彼女の希望値は5万ドル(540万円)でしたが、ホイールは錆びていてシートはカビが生え、半年以上売れずに置かれていました。クルマも認知度が低かったですから」
「わたしもお金はなかったので、2回に分けて支払いました。残りの2万5000ドル(270万円)は後日降りた保険金で支払いました」 修復されたアポロ・コンバーチブルは、1995年のペブルビーチ・コンテストでクラス2位を受賞する。
そのクルマはブラウンのもとで営業マネージャーを努めていた、ジョージ・フィンリーへ売却された。彼は今も2台のアポロ・クーペのオーナーでもある。
流麗なボディに最低限のジュエリー
荷室はボラーニ製のホイールと、給油口でほとんどが塞がれている。後にそれらはボディの外に付け替えられた。一見するとジャガーEタイプのように見えるが、リアライトの雰囲気はフェラーリの影響を感じ取れる。250GT PFクーペに近いと思うがいかがだろう。
ボディの角についたデリケートな造形のクオーター・バンパーに、卵型のフロントグリル。すべてが美しく、流麗なボディに最低限のジュエリーを身に着けたようだ。だが、一体感はそれほどでもない。
ロン・ブレシアのデザインは、カーデザイナーのフランコ・スカリオーネによって手直しされている。それでもテールのボリュームに対して、フロントノーズが大きい。クーペよりスパイダーの方がまとまりは良い。端正すぎて、感情的な抑揚は少ない。
アポロ3500GTコンバーチブルは眺めるより、運転した方が喜びは大きい。背もたれの固定された、セミバケットシートに腰掛ける。2人の距離は近いが、車内は意外と広々している。
ブラウンはジャガーEタイプのオーナーと話をした際、体格のいいアメリカ人は特に乗り降りが大変だということに気づいた。ミニスカートを履いた女性も。「アポロのレッグルームは広くとっています。20%〜35%の顧客は身長が180cmを超えていたので、ジャガーEタイプは狭かったはずです」
アポロの試乗レポートとブラウンへのインタビューは後編で。