【グランドツアラーの最適解】ベントレー・コンチネンタルGT V8 W12を凌駕
公開 : 2020.01.21 10:50 更新 : 2020.01.21 11:12
極めて上品なスーパーGTにV8ツインターボ・エンジンを搭載したコンチネンタルGT V8。フラッグシップのW12エンジン以上の良さを叶えていると、断言できるのでしょうか。英国の道で確かめました。
伝統的グランドツアラーといえばベントレー
V8エンジンを搭載したコンチネンタルGTの意味をベントレーに尋ねたら、エントリーモデルだと簡素に答えるかもしれない。確かに、完全に心奪われる芳醇なW12気筒エンジンに手を出さずに、ベントレーに浸ることができる。
12気筒エンジンの方が8気筒エンジンより優れているから、同様に排気量6Lの方が4Lより価値がある。果たして本当だろうか。実際に乗って確かめてみようじゃないか。
まず、目に入ってくる姿はベントレーが手掛けた純粋なグランドツアラー。GTという頭文字は、広く自動車で用いられている。GTIにまで広げるなら尚のこと。だが、ベントレーこそGTというコンセプトを従来から掲げてきたブランドだ。
高価でラグジュアリー(=グランド)でありつつ、ドライバーや同乗者に緊張を強いることなく長距離移動する(=ツーリング)ためのクルマ(=カー)。
それを叶えるべく搭載されるエンジンは、4.0LのV8ツインターボ。最高出力は549psもあり、2003年に登場した6.0LのコンチネンタルGTと比べて、10ps程度及ばない程度。
ただし、同じエンジンがアウディRS6に搭載されると、さらに50psほど追加で獲得できるという事実は知っておきたい。価格はコンチネンタルGT V8より30%以上安い。
加えて若干のハイブリッドシステムを追加することで、同じユニットはポルシェ・パナメーラで679psも叩き出す。この差には少しがっかりする読者もいるだろう。プラットフォームも、ベントレーと同じものが用いられている。
ベントレーに期待通りの心地よさ
だがわたしの経験では、パナメーラの場合、ハイブリッドシステムで増えた重量が、額面で追加された以上のパワーを打ち消している印象だった。ベントレーの549psを心配する必要はないだろう。
V8エンジンのコンチネンタルGTは、期待通り。軽量なエンジンのおかげで、フロントノーズから50kgも取り除かれている。
サスペンションも、軽量になった車重に合わせて調整を受けている。スポーティさを削るような結果にはなっていない。
前回コンチネンタルGT V8に試乗したのは、アメリカのカリフォルニア。素晴らしい印象だった記憶をたどると、疑念も湧いてくる。ベントレーが一方的に選んだ極めて滑らかな路面を、心地よい太陽光を浴びながら運転したからだ。
英国の道路網から逃れられない厳しい実情の中で、どのような印象を与えてくれるのだろうか。だが杞憂だった。英国西部、ウェールズ州のワインディングを走らせたが、ベントレーに期待するに相応しい乗り心地を提供してくれた。
数多くのクルマに試乗してきたが、コンチネンタルGT V8に似た経験をさせてくれたモデルが思い浮かばないほど。そして今回、ハンドリングの特性をよりあらわに感じ取ることができた。
カリフォルニアでの印象通り、パワフルで印象的なほどグリップ力が高い。ステアリングのレシオは適正で、重み付けも正確性も優れている。