【すべてが期待を凌駕】アストン マーティンDBXプロトタイプ 英国での評価

公開 : 2020.01.23 14:40

AMG E63S由来のエンジンと4輪駆動

アストン マーティンの既存モデルから流用される部分は殆どない。エンジンはメルセデスAMG由来の4.0L V8ターボガソリンだが、アストン マーティン・ヴァンテージDB11に積まれているものとはまったく異なる。

基本的にはメルセデス-AMG E63Sに搭載されるユニットと同じもの。そこへ、E63Sと同じアクティブ4輪駆動システムと、トルクベクタリング・リアデフがパッケージングされる。

アストン マーティンDBXプロトタイプ
アストン マーティンDBXプロトタイプ

すべてで共通するわけではななく、DBXにはメルセデス製のトルクコンバーター式9速ATを採用している。E63Sが採用する7速多板クラッチATでも、他のアストン・モデルのZF製8速ATでもない。

トランスミッションは、DBXを3t近い牽引能力に対応させ、低速トルクを豊かするために、アストン側で手直しを加えている。最大トルク71.2kg-mを伝達させるため、トルクの許容量も増やされているという。

一方で、4.0LのV8ターボエンジンから引き出せる最大トルクはまだ上にある。近い将来、この9速ATでは受け止めきれなくなる日も来るだろう。

サスペンションは、スプリングレートと車高の変更が可能な4チャンバーを持つエアサス。ビルシュタイン製のアダプティブ・ダンパーと、電圧48Vで作動するロール・キャンセリング機能を持つアクティブ・アンチロールバーを備える。車高は100mmの幅で変更できる。

これらの技術の多くはアストン マーティンとして初採用となるが、DBXが参入するカテゴリーの中では、標準的な装備内容といっていい。開発を率いたマット・ベッカーは、DBXに搭載するべき技術内容を早期に決めていたという。

程よい包まれ感の心地いいキャビン

興味深い点は、DBXには4輪ステアリングが装備されないこと。マット・ベッカーは、「4輪操舵システムはまだ取っておいてあります。追って必要になった時に、装備させるつもりです。低速域での機敏性や高い横方向のグリップ力など、この手のクルマに及ぼす良い影響は理解しています」 と話す。

「正直にいうと、(4輪操舵による)ステアリングの反応やコーナリング時の振る舞いが、気に入らないのです。4輪操舵を装備したクルマは、コーナリング中に何度かステアリングの操作が必要だと気づきました。反応が良すぎて、少し直感性に欠けます」

アストン マーティンDBXプロトタイプ
アストン マーティンDBXプロトタイプ

「DBXへは、自然なフィーリングが得られる、直感的な操縦性を与えたかったのです。進路を定めるのも簡単になります」 と助手席から教えてくれた。

アストン マーティンDBXに乗り込むのに、サイドシルへよじ登ったり身をかがめたりする必要はない。SUVの割に、そのまま身体を横に動かすだけで済む。

少し高めにある窓の高さは低く、フロントガラスはかなりスピード感のある角度。ドアパネルは適度にドライバー側に近く、車内は程よい囲まれ感がある。芳醇な設えで整えられたキャビンはゆったりしていて、想像以上に心地いい。

後部座席にも背の高い大人が座れる空間が用意されている。荷室の容量は632Lあるという。見た目にも充分広く、ゴルフバッグや犬のケージ、ベビーカーなど大きな荷物もするりと飲み込めそうだ。

DBXより実用性で優れるSUVがあることは確か。だが、快適で利便性に優れる、扱いやすい4人乗りのアストン マーティンを待っていた人には、とても好適なパッケージングだといえる。

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事