【英国初の高速道路を闊歩】ヒーレー3000とジャガーMk2、フォード・ゼファー 前編
公開 : 2020.02.01 07:20 更新 : 2024.08.16 16:37
0-160km/h加速を31秒でこなす
「ヒーレー3000には、クーパー由来となるカムアンドレバー型のステアリング・ラックがついていて、街乗りでは取り回しがとても重たいのです。でも郊外の道へ一度出れば、その走りは壮観といえます」
「レイコック・ド・ノーマンビル製のオーバードライブ(高速走行用のギア)はオプション。高速道路での走行には欠かせないでしょう。回転数を低く抑えられるので、快適性が大きく違います」
排気量の大きいビッグ・ヒーレーは、英国製スポーツカー市場で大きな存在感を示した。飛行機乗りのようなフライング・ジャケットが必要なほど、スピードが出たからだ。今から60年前、0-160km/h加速を31秒でこなすオープンカー並みにスリリングな乗り物は、多くはなかなかったはず。
一方で、トウチェスターの街から時速200km/hでロンドンの役員専用駐車場へ通うサルーンといえば、当時はジャガーMk2 3.8の一択だった。
ジャガーMk2 3.8は、長年に渡ってクラシックカーの代表的存在。純粋なジャガーを所有するという喜びは他では得られない。「360度完璧なクルマです」 とオパールセント・ダークグリーンの1964年モデルのオーナー、トレバー・エイトケンが話す。
「どの角度から見ても、間違いなく美しいデザインです。わたしにとって、MK2で最も魅力を感じているのが、美しいフォルムと純粋なボディラインですね」
ブラウンズ・レーンにあったジャガーの工場では1958年に先代のMk1 2.4と3.4の改良を着手。ガラス面積を大きく取ったキャビンへ作り直し、トレッド幅を広くした。
事実上のライバルは存在しなかったMk2
改良によって増えた車重に対応するため、Mk2に採用されたのは3781ccの直列6気筒エンジン。XKに搭載され名を馳せたユニットだ。1959年10月2日にデビューすると、当時の自動車雑誌は、事実上のライバルは存在しないと評価した。
確かに、ローバー社には同等のモデルは存在せず、BMCもライレーやMGのエンブレムを付けた競合モデルを出さなかった。サンビームMkIIIの後継モデルが、ルーツグループから発表されることもなかった。
今のオーナー、エイトケンは16才からジャガーMk2を欲しいと願っていた。そして遂に、1989年にこの3.8を手に入れる。
ジャガーを専門とするマルコム・ウイリアムズがシャシーの修復を行い、ジョン・ワイルディングがエンジンのリビルトを担当した。一度、1994年にガレージ保管となるが、2015年にリフレッシュを受けるためソープにあるダブデール・ガレージへ運ばれた。
2年後、作業の終わったジャガーMk2はショールームを飾れるほどの美しさを取り戻した。「わたしが夢見ていたジャガーそのものでした」 と微笑むエイトケン。
このクルマにはオプションのパワーステアリングが付いていない。都市部での取り回しは難しいが、メリットもあった。「M1を流れに合わせて走らせるには、しっかりした手応えがあって良いのです。パワステがない方が、手に伝わる感触がより引き締まっていて、ライン取りも確かです」 とは、積極的に走るオーナーらしい意見だ。