【ゴルフR譲りの300ps】フォルクスワーゲンTロックR 「R」は伊達じゃない

公開 : 2020.01.27 10:20

スマートで魅力的に走り、乗り心地も良好

TロックRはとても良く走る。ホイールベースは短いのにも関わらず、ゴルフRのように魅力的でスマートに。加えて直近のライバルでもある、アウディSQ2やセアトクプラアテカより、滑らかな乗り心地を得ている。

特に突出しているのが、足さばき。試乗車には695ポンド(10万円)のオプションとなるアダプティブ・ダンパーが装備されており、サスペンションのストロークはより大きく取れる点も有利に働いている。

フォルクスワーゲンTロックR(英国仕様)
フォルクスワーゲンTロックR(英国仕様)

高速で走行していても、荒れた路面に追従できなくなることは殆どない。ボディロールも最小限に抑えられている。まさにRらしい隠し技といったところ。

さらにTロックRの場合、コンフォートモードを選ぶと、ライバルモデルのユーザーが羨むような乗り心地も得られる。落ち着いて運転したい場面では、とてもありがたい。

ゴルフRにも多少当てはまる部分ながら、一体感は少し物足りない。ステアリングホイールの操舵感は正確でレシオの設定も良いが、フィーリングが薄い。

加えてゴルフRの方が、天候や道路に左右されることなく、アクセルペダルをより深く踏み、操る楽しさが味わえることも確かではある。低めのドライビング・ポジションが影響しているのだろう。もちろん、TロックRでもアクセルペダルを踏み込めるけれど。

搭載されるEA888型と呼ばれる2.0Lターボ・ガソリンエンジンが、回転数を問わずたくましいトルクを生み出す、優れたエンジンであることは承知済み。とてもスムーズでパワフルなユニットだ。

組み合わされるデュアルクラッチATも、現実的に走らせられる範囲で、不満を抱くことはほとんどない。レースモードを選ぶと、エグゾーストノートには破裂音も混ざるが、少々遊び過ぎに思えた。

ライバルモデルより頭ひとつ出た実力

4輪駆動システムはハルデックス製。マルチプレートクラッチを介し、最大で50%のトルクを後輪へと伝達できる。また可変スピードも従来以上に速められた。

クルマのグリップ限界を超えて楽しむタイプではないものの、トラクションも不足なし。そもそもスタビリティコントロールが常に姿勢を整え、自由に振り回すことはできない設定だ。アクセルペダルを踏み込んで攻め立てると、前輪駆動ベースであることを強く実感する。

フォルクスワーゲンTロックR(英国仕様)
フォルクスワーゲンTロックR(英国仕様)

フォルクスワーゲンTロックRを選ぶかどうかは、ドライバーの好みに大きく左右する。優れたドライビングフィールを重視し、やや安価な価格と広い荷室に惹かれるのなら、ゴルフRエステートを選んだ方が賢明だと思う。

背の高い子供がいるなら、Tロックの余裕のあるリアシートが活きてくる。それでもゴルフRエステートを超える魅力を、TロックRからは感じにくいかもしれない。

クロスオーバーにシンパシーを感じるドライバーなら、TロックRを日常の相棒として選ぶことに抵抗はないはず。主なライバルモデルより、本気を出した時の走行性能は明らかに高い。

セアト・クプラ・アテカやアウディSQ2はいくぶん硬すぎる。インテリアで勝るBMW X2 M35iが、フォルクスワーゲンTロックRといい勝負に思えるほど。

ライバルも含めて、どれか卓越した1台があるわけではない。しかし、季節や路面を選ばないホットハッチの素晴らしい記憶に紐付けられたTロックRは、頭ひとつ出たモデルだといえそうだ。

フォルクスワーゲンTロックRのスペック

価格:3万8450ポンド(549万円)
全長:4234mm
全幅:1819mm
全高:1573mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:11.5km/L
CO2排出量:176g/km
乾燥重量:1575kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/5300-6500rpm
最大トルク:40.7kg-m/2000-5200rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

人気記事