【オーロラを追いかけて】ロールス・ロイス・ドーンで行く オーロラ発見ツアー 前編

公開 : 2020.02.15 18:50

目指すは北限

ケースはアメリカ海洋大気局(NOAA)が提供する3日後までのオーロラ出現予報を見るように勧めてくれた。この予報では地球規模での地磁気の活動状態を「Kp」という指標を使って表している。

「可能な限り高い予報確率を待った方が良いでしょう」とケースは言う。

マットブラックのペイントがこの特別なドーンの魅力をさらに引き立てる。
マットブラックのペイントがこの特別なドーンの魅力をさらに引き立てる。

「予報は0から9で出されます。3から5であれば、オーロラを見られる可能性がありますが、予報が1か2の場合は厳しいでしょう」

NOAAの予報では、明朝午前3時から6時のKpは3であり、「ビューライン」と呼ばれるそこから北側であればオーロラが見られる可能性があるという線も、スコットランド中心辺りに設定されている。

英国気象庁の予報によれば、全国的に雲はところどころに見られる程度だというので、1日で辿り着くことの出来る北限を目指すことにしたのであり、その目的地がオークニーだった。

ドーンのキャビンに深く腰掛け、この全長5285mmの巨体に馴染んでくると、数多くの特別なモディファイが施されていることに気が付いた。

このクルマは若い顧客をターゲットにしたブラック・バッジ・エディションであり、陰影が印象的なマットブラックのボディカラーを纏ったこのモデルには、より多くのパワーと大径ブレーキ、レシオを高めたステアリング、締め上げられたシャシー、マッピングを変更したギアボックス、さらには低音を響かせるエグゾーストなどが採用されている。

一方で、このクルマはEVもかくやというほどの静けさを誇ってもおり、デーン・ビレッジを通過する際に聞こえて来たのは、21インチのカーボン製ホイールが踏みしめる玉石の囁きだけだった。

確かな快適性

出発してすぐにクイーンズフェリー・クロッシングを渡ると、ゆったりと高速道路へと合流したが、「パワーリザーブ」メーターはほぼ100%を示している。

6.6L V12ツインターボエンジンが放つ601psのパワーと低速から発揮される85.7kg-mのトルクが見事なパフォーマンスを発揮しており、ZF製8速オートマティックギアボックスも必要に応じて素早くキックダウンしてみせる。

玉石もドーンのキャビンにおける静けさにほとんど影響を及ぼさない。
玉石もドーンのキャビンにおける静けさにほとんど影響を及ぼさない。

実際、どのギアでもドーンの2.6tもの巨体を意識させられることはなく、聞こえてくるのは小さく呟くようなサウンドだけだ。

アダプティブ・クルーズコントロールのお陰で退屈なだけのA9号線の北上もなんとかやり過ごすことが出来たが、ところどころ雪を被ったハイランドの山々には不吉にも分厚い雲が掛かっている。

それでも、サザランドの海岸線沿いに開けた道路の連続コーナーを舞台に、ドーンの見事なハンドリングを楽しんでいると気分も明るくなってきた。

今朝出発した時には、時にゴツゴツとした衝撃を伝えてきたドーンだったが、いまではまるでホバークラフトのスカートにエアが充填されたかのような、滑らかな乗り心地を見せてくれる

ブローラを通過する頃には空がピンク色に染まり始めたが、ここからノースコーストまでは暗闇のなか90分のドライブだ。

基本的にはストレートが続く荒れた路面のB級路も、ロールスをまごつかせるようなことはなかった。

0-97km/h加速5秒以下を誇る他のモデルの多くが、こうした場所で足並みの乱れを見せるに違いないが、ドーンは確かな快適性とともに矢のように前へと進んで行く。

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