【オーロラを追いかけて】ロールス・ロイス・ドーンで行く オーロラ発見ツアー 前編
公開 : 2020.02.15 18:50
まるで夢のなか
ギルズ湾からは1週間前に就航したばかりのペントランズ・フェリーズの新造船、MVアルフレッドに乗り込むことになる。
この1400万ポンドを掛けて新たに造られた船は、98台の自動車を積んで1時間でオークニー諸島へとわれわれを運んでくれるが、穏やかな船旅は本当に素晴らしいものだった。
セント・マーガレッツ・ホープへと到着すると、この日一夜を過ごすダンビーにあるスミスフィールドホテルへと向かった。
ホテルの主人、アン-マリー・クラウストンは直ぐにわれわれの旅の目的を言い当てると、自らも熱心なオーロラハンターであることを明かし、まるでわれわれの興奮を見透かしたように、彼女が最近撮影したという刻々と移り変わるオーロラの写真を見せてくれた
この地でオーロラは「ミリー・ダンサーズ」と呼ばれており、まるで本当に踊っているようだ。
夕食の後少し眠ったが、オークニー本島の北西端、バーセイでオーロラの出現を待ち構えるべく午前1時にはふたたび目を覚ましている。
ここにはオーロラ観察に邪魔な街の灯りなど存在せず、月の入りは真夜中直前だった。
まるでドーンはすでに景色のなかに溶け込んだかのように闇夜のなかを突き進み、まだ眠気のとれない頭にはまるで夢のなかにいるかのように感じられる。
生憎の天候
だが、この移動観測所となるドーンのルーフを下ろすとそんな状態も一気に終わりを告げた。
気温は3℃で、泡立つ波が咆哮を上げる海には、風によって海藻が打ち寄せられており、残念なことに、ブラックレザーのリアデッキには小さな雨粒が落ちている。
何とか星を見つけようとしたが、見あげる空の大部分は雨雲に覆われたままだ。
それでも、ほとんど見えないが、北の水平線には明るい空が広がっているのが分かる。
英国から見る人間の目には半透明の白っぽい靄のようでしかないが、長時間露光撮影した写真であれば、色とりどりの広がりつつあるオーロラの光を再現することが出来るだろう。
カメラマンのレーシーが撮影の準備を進めるが、彼のヘッドランプが放つ赤い光が、まるで屋外の暗室で作業をしているかのように暗闇を和らげてくれる。
だが、オーロラ・ウォッチUKの磁気計はほとんど反応を示しておらず、それはレーシーの高い精度を誇るデジタル一眼レフカメラのセンサーも同様だった。
どうやら今日は宇宙も地球もわれわれの味方ではないようだ。
20秒でまるで折り紙のように動作するルーフを何度も開閉させながら、レーシーは雨のなか粘っていたが、ついに午前6時40分、オーロラを諦め、日の出を撮影するために東へと向かった。
フィンズタウンの緩やかなスロープを持つ引き上げドックへと到着すると、夜明けの暖かな日差しとドーンの強烈に暖かいシートに感激させられた。
朝食をとりにホテルへと戻ると、食事をしながら次の予定について話し合うことにした。