【プレミアムが与える価値観の変化】アウディA6アバント 40 TDI (4) 長期テスト
公開 : 2020.02.01 11:50 更新 : 2020.02.01 16:32
ドイツ御三家、Eクラスと5シリーズに並ぶ存在のA6。幅広い訴求力が必要となる、クラスベストのエグゼクティブ・モデルといえるのか、長期テストを通じて最新アウディA6を分析します。 前回から車両はアバントに変更となりました。
積算 1496km 日中に味わうグラスルーフ
冬の季節、日の出は日本以上に遅くなる英国。おかげで日常的な通勤時間では、アウディの屋根に備わる強みの1つが、充分に楽しめない。
それでも週末、日中にドライブへ出かければ、大きいグラスルーフから広がる世界と、明るく照らされる車内に感銘を受ける。同時にプライバシーガラスが、すべての人に歓迎される装備ではないことにも気付かされた。
積算 2983km トヨタ・アイゴに乗っていた経験
英国AUTOCARへ入社する以前、学校の教師だった筆者。クルマは必要だったものの資金がなく、少ない出費で気軽に乗れる、ヤリスより小さいトヨタ・アイゴに乗っていた時期があった。
クルマ好きからすると、かなり大人しい選択。典型的な先生のクルマという見られ方を、英国ではされがちでもある。
毎月の支払いは120ポンド(1万7000円)ほどで、ランニングコストもメンテナンス費用も安かった。しかも人間工学に基づいた、現代的な尖ったデザインを持つモデルを選んだ自分に、良い選択をしたと納得していた。今は義理の兄弟に貸している。
今の自分の暮らしは、かなり対象的になった。日往復130kmほどの距離を通勤するようになった。少なくとも今のところは、このアウディA6アバントで。
英国の交通環境におけるA6
A6はアイゴと比べても、タイヤは4本だしボディカラーも近い。同じ自動車だ。ところが先日、ロンドンを環状に結ぶ高速道路のM25号線を走っている時、とあることに思いが巡った。
クルマが人生に与える影響とはどんなものなのだろうか。アウディという目新しさに慣れてしまった今、ラグジュアリーという価値はどこに影響があるのか。
仕事を終えて家に帰ると、クルマには3時間も乗っていたことになる。まだ慣れずクタクタだが、アイゴで通勤していたときとは中身が異なる。
コンパクトカーで長距離を走ること、特に高速道路での移動は楽な作業ではない。アウディA6は、「まゆ」のような包まれ感がある。ロードノイズは最小限だし、インテリアは上質。ストレスの多い通勤路であっても、落ち着いた雰囲気で過ごすことができる。この特別感は今でも実感する。
乗り心地にも同じことがいえる。路面状態の悪い郊外の一般道は、アイゴにとって厄介な相手だった。ところがA6なら、普通のコイルスプリングのサスペンションでも、滑らかにやり過ごすことができる。
高速道路では、大型トラックに対して余りにも小さいアイゴは、いかにもか弱い。周囲のドライバーがアイゴへ一切気を使わなかったことも、A6と比べると注目するほどの違い。毎日の運転の中で、最も大きな差異だと思う。
その時代に適したものだけが生き残るべきという、最適者生存という考え方。英国で運転する時、ヒエラルキーの底辺にいるような場面で味わう、悪い側面だと思う。