【愛し続けて50年】ウーズレー4/44 すべての思い出が詰まったサルーン 後編
公開 : 2020.02.09 16:50 更新 : 2022.08.08 07:51
何か特別なものを取り戻した
「あまりに酷い状態だったので、クラシックカーのイベントに参加する価値があるとは思いませんでした。でも最近は、何か特別なものを取り戻した気がしています。このクラブにはモデル毎にスペアパーツのコーディネーターもいて、どんな質問にも答えてくれるんです」
「クラブは、助け合うため。会員お互いに、サポートが必要なんですよね」
スチュワートは今でも、日常的にウーズレー4/44に乗っている。近々、ヨーロッパ大陸への自動車旅行も計画しているという。「運転して出かけることが喜びなんです。協力してくれた多くの人のためにも、運転したいと思います」
「トランスミッションはオリジナルのままなのでシンクロがだめになっていて、変速時はダブルクラッチ操作が必要です。フィアット500に乗った時があって、それにもシンクロメッシュがなかったのですが、無事に発進できました」
「ウーズレーはとても非力。パトカーにも使われていた時期がありましたが、泥棒は警察より速く逃げられたでしょうね。とてもリラックスできるクルマです。このクルマのことはすべて理解しているので、わたしにしか運転できないでしょう」
「90km/hから95km/hくらいで走っている時、不思議に心地よい感覚に陥るんです。ただ走らせているだけでも。順調にスピードが乗ってしまえば、大きな丘がない限り、ドライブは順調です」
「これは、わたしが自動車の運転を学んだクルマ。今でも大切に運転している、ということ自体に、満ち足りたものを感じています」
番外編:ウーズレー4/44を運転してみる
とても控えめなパフォーマンスを持つスチュワートのウーズレー4/44。シングルSUキャブを装備し、最高出力は46ps。回転はスムーズでトルクフル。3速で引っ張れば充分に良く走る。
コラムシフトのストロークは長く、本来よりも変速時の感触が緩い。シフトゲートははっきりせず、ポジションはわかりにくいし、シンクロメッシュは確かに駄目になっていた。
それでもクラッチペダルのストロークは短く滑らか。ブレーキも悪くはない。ステアリングのレシオもちょうど良く、コーナリング時も過度なロールに悩むことはない。シンプルなリアアクスルを備えるが、乗り心地は快適と呼べる。
上品な中型サルーンとして、カーデザイナーのジェラルド・パーマーが手掛けたボディに、レザーとウッドの古い英国スタイルが宿るインテリア。当時のブランドの価値観として不足のない、よく整えられたクルマだといえる。
一方で、ナフィールドとBMCによる、同じクルマをブランド違いで売る、バッジエンジニアリングの良くない代表例ともいえる。
1952年から56年にかけて生産されたウーズレー4/44だが、その後に15/50へと代替わり。1489ccのBシリーズエンジンへと載せ替えられている。どちらも、当時高く評価されたMGマグネット Z-タイプより売れ行きは良かった。
今でもウーズレー4/44が元気に走ることに、驚かされる。筆者としては、スチュワートの献身的ともいえるウーズレーへの愛が、理解できなくもない。