【期待できる正常進化】アウディS3プロトタイプ 試乗 エンジンは不変の2.0L 310ps
公開 : 2020.02.09 10:20
統合してダイナミクスを管理
プロトタイプとして、アウディはS3で強く強調したい部分が4つある。クワトロと呼ばれる4輪駆動システムとプログレッシブ・ステアリング、ダンパー、アウディのドライビング・セレクトモード。
これらの機能はS3に装備されるだけでなく、間もなく登場するA3の幅広いグレードでもオプションとして選べるという。ただし、これらの機能は現行のS3にも存在していた。
新しい部分をエンジニアのセバスチャン・ストラッサーに聞いてみたところ、すべてを統合させる技術だという。「ダンパーとクワトロ、ブレーキによるトルクベクタリング機能などを含めた、ダイナミック・コントロールの中央機能は今も存在しています。今回、すべてが同じ情報で管理されるようになりました」
「例えば、クルマがアンダーステア状態にあるとき、カウンターを当てるように同調して機能します。分散されたシステムでは、お互いにどんな状態へ持ち込みたいのか、わかっていませんでした」
さらに、新しいダンパー・システムへ細かな調整を与えることで、目標の達成につなげたいとのこと。「予測可能な振る舞いを保ちつつ、より機敏に反応させることで、運動性能を向上させたいと考えました。また快適性とダイナミズムとの、より幅広い両立も目指しています」
「加えて、動的性能に影響を与えることなく、燃費効率も高めたいと考えています」 とストラッサーは説明する。簡単ではない内容に聞こえる。
すべての領域ですでに好印象
S3の車内は、アウディとして見慣れた光景。風変わりな部分もない。筆者の考えでは、ホットハッチの大切な要素として、どれだけ短時間に理解し合える友人になれるか、がある。スーパーカーの圧倒するような走りとは、別の楽しみ方だといえる。
アウディS3ほど、すぐ親友になれるクルマは少ない。走り慣れない、風の強いアゾレス諸島のワインディングでも、限界領域に迫った走りを安心感を残したまま楽しめた。このプロトタイプは量産モデルにかなり近いらしいが、S3のすべての領域での好印象ぶりに、高い訴求力を感じた。
ただし、挙動の読みに関しては、万人受けする設定ではないかもしれない。もっとエッジの立ったフィーリングがお好みなら、ホンダ・シビック・タイプRやヒュンダイi30Nの方が、満足感は高いはず。
プログレッシブ・ステアリングは、フィードバックが改善しているが、それ以外の大きな変化は感じられない。だが、操舵時の入力がより直感的になった。タイトコーナーでステアリングを切った際、修正の必要がほとんどない。
ステアリングには3つのモードが用意されており、腕試しのようなルートであっても、切り初めから重み付けの良い「バランスド」が最も筆者の好みだった。「ダイナミック」モードはやや人工的な印象がある。
乗り心地の上質さは、従来からS3のストロングポイント。新しいS3となっても、がっかりすることはないだろう。
市街地には予想外に長い石畳の道や、ツギハギも多かったが、サスペンションを「コンフォート」モードにしておけば上手になだめてくれる。「ダイナミック」を選択しても、予想よりも乗り心地は良かった。