【期待通りの活発な走り】ミニ・エレクトリックに初試乗 純EV 航続距離231km
公開 : 2020.02.10 10:20 更新 : 2022.10.04 11:49
パワーウエイトレシオは131ps/t以上
しかし客観的に見て、クルマの価格と比較すると、航続距離は不安要素でもある。プジョーやボクソール(オペル)、キアやルノーなどは安価に、それ以上の航続距離を叶えている。ミニにとって、あまり触れられたくない部分だろう。
試乗コースとなったのは北米のマイアミ。天気の良い、交通量の多い条件での航続距離は200kmほどだった。より平均スピードが高く、寒い英国の道路環境では160kmほどの航続距離になるのではないだろうか。
もし同等のサイズと価格を持つ、ライバルのコンパクトEVを選んだのなら、航続距離は50%ほど長いはず。また、400kmから480kmほどの航続距離を持つEVも、ミニ・エレクトリック並みの価格で手に入る。合理的に考えると、悩む部分となるだろう。
一部のユーザーにとっては、クルマのドライビング体験が、航続距離の短さを越える魅力とならなくもない。比較的小型のバッテリーのおかげで重量も軽く、ミニ・エレクトリックのパワーウエイトレシオは、131ps/t以上。
ルノー・ゾエの最も速いグレードやプジョーe−208でも、90ps/tといった辺り。かなり機敏に走るキア・ソウルEVですら、120ps/tは超えない。
今回の試乗ルートは混雑も多く、100km/hに届くスピードも出せなかったから、ライバルモデル以上の力強いパフォーマンスを備えているとは感じにくかった。だが、少なくとも気張る必要はまったくなかった。
ミニらしいフラットで鋭いハンドリング
多くのEVと同様に、静止状態からの加速は鋭く、80km/hまでが最も活発に走る速度域。とっさの加速で深くアクセルペダルを踏み込めば、トルク感はほどほどだが、不満のないレスポンスを得られている。
小さ目の慣性で速い流れへの合流も簡単にこなせ、アクセルペダルを踏み込むほどに鋭く後続車を引き離していく感覚は楽しい。そのかわり、80km/hを超えてくるとモーターが頑張るノイズが聞こえてくる。
聴覚での魅力として、モーターのメカニカルノイズを調律しなかったことは少々残念。現状では、クルマが発する明確なサウンドといえば、歩行者へクルマの接近を知らせるための、静かに響く近接音だけだ。むしろその音も、ミニならデザインできたのではないだろうか。
車重はクーパーSの3ドアと比べると150kgほどの追加となっているが、重心はライバルモデルと比べれば30mmほど低い。おかげで、フラットで機敏な、ミニらしい鋭いハンドリングは損なわれていない。もっとも、それを楽しめるのは航続距離内に限られるのだけれど。
横方向のグリップ力は高く、ハンドリングの応答性は他のミニと並ぶほど良好。より適した道なら、もっと楽しめるはず。
垂直方向の姿勢制御はかなりタイト。多くのライバルと同様に、特に重さは感じさせない。むしろ増えた車重は、低速域での乗り心地をフラットにし、一般的なミニの水準より快適に感じられた。とても納得のいく仕上がりとなっているようだ。