【たった2年で廃止】なぜ? メルセデス・ベンツのピックアップ「Xクラス」失敗の舞台裏
公開 : 2020.02.12 11:50 更新 : 2021.10.09 23:55
ピックアップトラックには大きく2つの市場
Xクラスが、ピックアップトラックの本場であるアメリカで発売計画がなかった理由は、そもそもダイムラーがアメリカ向けの商品としてXクラスを企画しなかったからだ。
その背景にあるのが、世界全体でのピックアップトラック市場の二極分化だ。
市場その1は、アメリカ。デトロイト3(GM、フォード、FCA)の真骨頂である、フルサイズピックアップトラックだ。
GMはシボレーシルバラード、フォードはFシリーズ、FCAはラム。大出力/大トルクのV8ユニットやV6ターボを搭載し、乗用から商用まで幅広い年齢層に支持されている。
日系もトヨタがタンドラ、日産がタイタンでデトロイト3に挑む。
一方で、北米市場でミドルサイズピックアップトラックは、フルサイズピックアップトラックの影に隠れるような存在。
ある程度の市場規模があるが「せっかく買うならフルサイズ」という顧客が多い。
市場での流通数が多いため、フルサイズピックアップトラックの実売価格も3万ドル前後(300万円程度)と手頃だ。
市場その2が、新興国市場向けだ。フォード・レンジャー、三菱トライトン、いすゞD-マックスなどが売れ筋。サイズ感としては、北米ミドルサイズピックアップトラックに近いが、商品性は若干違う。
この市場にXクラスがチャレンジしたのだ。
廃止の理由 ダイムラー持ち株会社化?
それしても、イヤーモデル2年で廃止とは、思い切った決断だ。
欧州での報道によると、2019年のXクラス世界販売総数は「たったの1万5300台」という表現だ。
ビックマイナーチェンジによる立て直しで、ブランドイメージを守るのがメルセデスの定石に思えるが……。
非を認め、新設クラスをズバッと切り捨てることが、ブランド力を維持することにつながると、2019年11月に新体制となったダイムラー持ち株会社の経営陣たちが判断したといえる。
C新体制では、これまでの乗用車部門とバン部門を統合してダイムラーAG、トラック部門とバス部門を統合してダイムラートラックAG、そしてモビリティサービス部門とファイナンス部門が統合してダイムラーモビリティAGとなった。
ダイムラーとして史上最大級となる、こうした組織再編の中で、ブランド戦略として、またはアライアンス事業として、なんとなく宙ぶらりんの状態となっていたXクラスの廃止が決まったと考えるのが妥当だ。
逆に言えば、Xクラス失敗を受けて、当分の間、メルセデスのピックアップトラックは登場しないはず。
ならば、値頃なうちにXクラスを買っておくと、数十年後にはネオクラシックカーとして値打ちが上がるかもしれない。
日本では新車として未上陸のまま、Xクラスが姿を消す。