【狂気のレーシング・ミニ】ツインカム・ターボからツイン・エンジンまで 後編
公開 : 2020.02.15 16:50 更新 : 2020.12.08 10:55
大衆向けコンパクトカーとして、アレック・イシゴニスが生み出したミニ。しかし、人とは違った手法をあえて狙った、異端児的エンジニアにも好まれたクルマでした。誕生60を記念して、個性的なミニ・レーサー10台をご紹介しましょう。
6. コールドウェル・ツインカム
W.D.C.ビル・ニーダムは、イングランド北部の伝説的なミニのチューナーだった。おそらく最も有名な改造ミニといえば、ツインカム・エンジンを搭載したヒルクライム用マシンだろう。
1967年に隠し技の効いたマシンを生み出す以前から、コールドウェル・エンジニアリングで多くのチューニング・パーツの開発を手掛けていたビル・ニーダム。経験を活かし、クーパーSのエンジンに大幅な改良を加えた。
ニーダムは排気量1071ccのエンジンの下半分に、特注のシリンダーヘッドを組み合わせ、ディストリビューターとコイルは2丁がけ。当時は出たばかりの、フュエル・インジェクションも搭載した。
初期トラブルに見舞われ、デビューした1967年シーズンの前半は冴えないパフォーマンスだったが、徐々に復調。シーズンが終わる前には、本調子を取り戻している。
このコールドウェル・ツインカム・ミニは誕生から40年以上経った今でも保管され、現存している。現在のオーナーは、生みの親の息子、マーク・ニーダムだという。
マニアな小ネタ
ビル・ニーダムはその後、ミニのエンジンを搭載したコールドウェル・スポーツレーサーを制作。こちらも個性的な、フロントエンジンのミンクF3マシンも設計している。
7. コンロイ・モーターズ 4ドア・ミニ
ミニは、ラリーでの活躍の歴史も豊かだということはご存知だろう。その中でもこの4ドア・ミニは、コースを外れたクルマとして最も個性的な1台だといえる。
ロンドンの北、フィンチリーのコンロイ・モーターズによって作られたクルマで、ミニ・バンのボディの後ろに、通常のミニの後半が合体してある。さらにドア2枚が追加され、ルーフはアルミニウムで作り変えられた。ドアは、前後逆向きで、左右入れ替えて取り付けられている。
エンジンは1293ccのAシリーズで、オースティン・ミニ・クーパーSのもの。1970年のデイリー・ミラー・ワールドカップ・ラリーをジェームズ・コンロイとアラン・キーフで戦ったが、1300cc以下のクラス1に参戦したのはわずか4台だった。
この個性的なボディをまとったラリーマシンは、不運にも最も早いリタイアを喫してしまう。ロンドンからリスボンまでを走行中に、リアサスペンションが破損してしまったのだ。
後にこの4ドア・ミニは再塗装され、フロントガードと13インチのミニライト・ホイールが外されて売りに出された。今もちゃんと残っている。
マニアな小ネタ
この1970年のデイリー・ミラー・ワールドカップ・ラリーに参戦した他のミニは、ワークスの1275GT。ジョン・ハンドリーとポール・イースターによってドライブされたが、わずか4日でエンジンブローし、リタイアしている。