ロードテスト BMW M8 ★★★★★★★☆☆☆
公開 : 2020.02.15 19:50 更新 : 2020.02.21 21:21
内装 ★★★★★★★☆☆☆
スタンダードな8シリーズに対する、M8コンペティションのマテリアルとヴィジュアルの向上を図ろうというBMWの努力は、それなりに成功したといえる。
標準仕様となるキルト仕上げのメリノレザーはソフトなタッチで、見目麗しく、このクルマにふさわしい。ブラシ仕上げのメタルやグロスブラックのトリムに組み合わせられたカーボンパネルは、このクルマの秘めたパフォーマンスカー的性格を思い出させてくれる。
キャビンの構造はまさしくBMWのそれだが、着座位置は前方視界を妨げるほど寝てはいない。調整範囲は広く、シートは低く、高いウインドウのラインやトランスミッショントンネル、ドライバーに向けられたダッシュボードに包まれる。
ステアリングコラムはわずかながら右へオフセットしているが、不満を感じるほどではない。ほぼ全面的に、エルゴノミクスやドライビングポジションは期待通りの秀逸さだ。
結果的に、近年のBMWでおなじみの環境が、このパフォーマンスモデルのフラッグシップにも備わっている。しかし、問題がないわけではない。
メルセデスAMGやベントレー、アストンマーティンといったライバルたちは、リッチなマテリアルや華美なヴィジュアルで豪華絢爛に飾られている。それらに比べると、このM8でさえ、BMWらしく控えめで身近なクルマに思えてしまう。
つまり、S63クーペやコンチネンタルGT、DB11などと見比べたら、ちょっとばかり興が醒めるのだ。エキゾティックなヴィジュアルや、驚きを覚えるような手触りに欠けるのである。
とはいえ、実用面に目を向けると、M8コンペティション・コンバーティブルは名誉を挽回する。キャビンのあちこちに収納スペースが用意され、後席は子どもやふたり分の旅行カバンなら問題なく収まる広さを備える。ただし、大人がリアシートで快適に過ごせるとしたら、小柄なひとだけだろう。
ただし、トランクルームはソフトトップの収納部に容量を割かれてしまう。クーペでは420Lあるが、コンバーティブルでは350Lに目減りするのだ。