【あるガレージの挑戦】EVビートルで復活 見つめるのは未来
公開 : 2020.03.20 18:50
急速な学び
バンブルビーの手前にもう1台のEVビートルが停まっているが、これはジャックズ・ガレージが自ら創り上げたものだ。
かつてサラマが日常の足として使っていた車両をベースに、新品同様のテスラのバッテリーと、工業用部品メーカー、カーティス社製の電気モーターを搭載している。
「このクルマはまるで飛ぶように走ります」と、彼は言う。「ですが、洗練不足です」
確かに欠点はあるものの、このクルマによって、eClasssicsはジャックズ・ガレージが新たなテクノロジーに対応する準備が整っていることを理解したのだ。
「急速に技術を学びました。このクルマが無ければ、eClassicsがわれわれのことをパートナーだと見做すことはなかったでしょう」と、サラマは話している。
サラマはいまジャックズ・ガレージの明るい未来と発展を胸に描いている。
すでにeClassicsにはEVビートル用のシャシーをオーダーしており、数カ月以内にデモカーとして登場予定だ。
その後、英国でもジャックズ・ガレージからEVビートルが発売されるとともに、オーナー自らが所有する車両を持ち込めば、EV化にも対応してくれるようになる。
EV化によるパフォーマンスと信頼性向上に以外にも、サラマはeClassicsとフォルクスワーゲングループのコンポーネントパーツ部門との合意がもたらした、このEVビートルの新たなメリットについても強調する。
「もし何かトラブルが起こっても、わざわざeClassicsやロンドンにあるわれわれのガレージまで車両を持ち込む必要はありません」
「最寄りのフォルクスワーゲンディーラーへ行けば、シャシーナンバーをシステムへと入力することで、使用されているすべてのコンポーネントの情報にアクセスすることが出来るのです」
最高の選択肢
EVビートルは単にe-Up同等の速さと信頼性を備えているだけでなく、毎日乗るモデルとして同等の利便性を備えている。
その結果、このビートルのEVは、平均的なEVのコンバージョンモデルよりも高価なプライスタグを掲げることとなった。
ドイツ国内でeClassicsが提示している持ち込み車両のEV化コストは5万ユーロ(595万円)からとなっているが、完成車両の価格は10万ユーロ(1191万円)近くにまで達する。
だが、その結果手に入るのが、完ぺきなレストアを施され、回生発電システムと36kWhのバッテリーを搭載して、160km程度のEV航続距離を備えたビートルなのだ。
バックカメラやGPSナビ、オーディオシステムにセンターマウントされたタッチスクリーンなどもこのEVビートルには与えられている。
わたしが所有する本物のクラシック・ビートルが備える唯一のオプションが、「ダッシュボード・パッド」であることは考えれば決して悪くはないだろう。
では、これが将来アイコンと呼ばれるモデルになるための第一歩なのだろうか?
もしそうだとしたら、一途なフォルクスワーゲン・ファンはタイプ1への忠誠心を自ら克服しなければならなくなるだろう。
サラマでさえ、EVビートルのドライビングを「ガソリンの臭いとエンジン音がないことで、少し申し訳ないような気持ちになります」と言うが、それでも、「リサイクルやアップサイクルが当たり前になりつつあるなか、このクルマは最高の選択肢です」とも話している。
このEVビートルは、電動化されたアストンマーティンDB4やジャガーEタイプ・ゼロのように、クラシックカーファンの血を湧き立たせるようなモデルではない。