【ホンダの大英断】四輪でも本社・研究所を完全連携体制の報道 なぜホンダは組織改革を急ぐ?
公開 : 2020.02.17 12:02 更新 : 2021.10.09 23:55
なぜ急ぐ? ステップ1だった「Rの再編」
ここへきて、一気に加速した研究所の再編。
時計の針を少し戻すと、再編の第一ステージは2016年の「Rの再編」だった。ホンダを含めて、自動車など技術系の商品を扱う企業では、R&Dという名称がよく使われる。
R(リサーチ)とは、基礎的な技術研究をする領域。D(ディベロップメント)とは、商品化を目指した開発領域を指す。
2015年までの過去約10年間、研究所でのRは、ASIMOや材料研究を行う「基礎技術センター」、「ホンダリサーチインスティテュート」、「四輪R&Dセンター内での研究部署」に分散していた。
これを整理、統合した上で、IT関連研究を目的としてR&DセンターXも新設した。
Rの再編の詳細について、当時の研究所・松本宣之社長にダイヤモンド社ダイヤモンドオンライン取材で詳しく聞いた。
インタビューは本社で行ったが、そのなかで筆者は松本社長に「将来的には、研究所と本社を融合することを想定していますかか?」と聞いている。
この時点で松本氏は、Rの再編を含む研究所の組織再編によって、「本社の各事業部と研究所が両輪となって動ける体制にします」という表現に止めていた。
Rの再編から2年後の2019年に、前述のような研究所の大規模な組織再編が行われ、それからたった1年、今回の四輪での本社・研究所機能統合と急ピッチでことが進んでいる。
「商品を測るものさし」通用しなくなった
研究所改革の必要性について、ライフクリエーションセンターを統括する研究所常務役員の板井義春氏は2019年11月、ダイヤモンドオンラインでの筆者インタビューでこう言った。
「ホンダがこれまで培ってきた、『商品を測るものさし』が通用しなくなりました」
本社にしろ、研究所にしろ、ホンダはいま、これから進むべき道について迷っているのである。
そうした中、まず二輪事業で本社・研究所を二輪事業本部モノづくりセンターとして統合している。
欧州ブランドや中国・インドのベンチャー企業が、二輪に対して新しい付加価値を提案し、それが世界市場で受け入れられ始めた、という背景がある。
対して、四輪の場合、二輪よりも社会背景の変化は複雑だ。
ダイムラーのマーケティング用語である、CASEに代表される、コネクテッド、自動運転、シェアリングや新サービス事業、そして電動化が進む。
ブランド戦略としても、日本市場で近年、ボルボ、ジープ、シトロエンなどマイナー系が着実にシェアを伸ばすなど、新たなるトレンドが生まれてきた。
現時点では明らかに、ホンダは時代変化を後追いする立場にいる。二輪マン島TT、F1、CVCCなど、時代をけん引した、あの頃のホンダを取り戻すため、本社・研究所のさらなる変革が急務なのだ。