【イメージ通りの万能選手】アウディRS6アバントへ試乗 V8ツインターボ 599ps
公開 : 2020.02.19 10:20
上質でありながら圧倒的な走行性能
確認はこのくらいにして、英国の道を走ってみよう。ちなみに試乗車は季節がら、スタッドレスタイヤを履いていた。ハンドリングの印象には少なからず影響があるはず。
RS6は今まで通り、スーパーカー・キラーでありながら上質。スチール製スプリングであっても、メルセデスAMG E63やBMW M5よりも乗り心地は滑らか。舗装の剥がれた大きな窪みでは、流石に大径ホイールが振動するのがわかるものの、荒れた路面も上手に処理してくれる。
中回転域までは静かで穏やかに回るエンジンも同様。リラックスして走っている限り、トランスミッションはスムーズに変速を繰り返す。豊かな最大トルクは2050rpmから発生する。
そこからアクセルペダルを深く踏み込んでも、期待するほど即時的で野性味溢れる加速を見せることはない。0-100km/hの加速には3.6秒しか掛からないから、遅いわけではない。リニアなパワー感と圧倒的なトラクションによって、スピード感が沸かないだけ。
エンジンの始動時は高らかに目覚め声を上げるし、ダイナミック・モードを選んでいると、スロットルオフで弾けるようなサウンドも響くが、V8エンジンのサウンド自体はかなり静か。
それでも加速性能は暴走列車のように激しく、速度が高まるほどに加速度も強まるような感覚がある。アウトバーンでは有効でも、英国の高速道路では少々手に余る。
4輪駆動と電子制御が支える安心感
4輪操舵システムによって、RS6は今まで以上に機敏な身のこなしを得た。特に低速域では、長いホイールベースを感じさせないほど。駐車もしやすく、日常使いのクルマとして適していることを再確認する。駐車センサーはやや過敏気味だったけれど。
アルカンターラで巻かれたステアリングホイールに伝わる感覚は薄いが、反応はクイック。コンフォート・モードを選んでいれば、重み付けも自然。
スタッドレスタイヤを履いていても、路面を掴む感覚に不足はない。狙ったラインを、忠実にフロントがなぞっていく。
ドライビング・モードにもよるが、コーナー出口では、滑らかに次のストレートへロケットダッシュを決めるか、僅かなオーバーステアに持ち込むかも選べる。派手にカウンターステアを当てる必要はない。ステアリグを少し戻し、駆動系のトリックに任せればいいだけだ。
E63やM5の場合、後輪のスリップを検知するまでは基本的に後輪駆動となる。一方のRS6は、通常は40:60で前輪にもトルクが送られている。
おかげで突然のドリフトなど挙動が乱れることもない。グリップの急激な変化があっても、電子制御システムが常に支えてくれている。
全体的な姿勢制御も好印象。RS6はしっかりと路面を掴み、フラットで高速にコーナリングしていく。しかし、起伏のあるコーナーを本気で攻め込んでいくと、2075kgの車重と戦うサスペンションが乱れる場面もある。常に安定志向ながら、大きなボディの事実を思い出すだろう。