【相違の英国オープン・スポーツ】ロータス・エランとサンビーム・タイガー 後編
公開 : 2020.02.29 16:50 更新 : 2020.12.08 10:55
英国自動車史に名を残すロータス・エランとサンビーム・タイガー。1960年半ばに誕生したコンパクトスポーツは、異なるベクトルを向いていたにも関わらず、共通性も持ち合わせていました。甲乙つけがたい2台を比較してみましょう。
もくじ
ー50年以上所有しているタイガーMk1
ー低い回転数から響く活発なサウンド
ー秀でた走りのコアはボディの小ささ
ー想像以上のコーナリング・スピード
ー悩んで選ぶより両方のオーナーでありたい
ー2台のスペック
50年以上所有しているタイガーMk1
活発なオーナーに迎えられた多くのスポーツカー同様、サンビーム・タイガーも改造が施されている個体が多い。そんな中で数学者のジョン・オッケンデンが所有する、1965年製タイガーMk1はほぼ完全なオリジナル。オリジナルに戻したい人が参考にするべきクルマといえる。
1969年に手に入れたクルマで、タイガーのオーナーとして英国では最も所有歴の長い人物だろう。「4年落ちのクルマを購入しました。最初はエディンバラのショールームにあったようです。手が負えなかった、ジャガーXJ150にかわるクルマを探していたんです」 と振り返るオッケンデン。
「信頼性も重視していましたが、優れたパフォーマンスも求めていました。一度シリンダーヘッドを降ろした以外、特に何も手は加えていません。1970年代にMGマグネットMk2を手に入れるまでは、日常的に乗っていました」
「オーナーズクラブの初期メンバーの1人です。昔は幅の広いホイールを付けていましたが、いまは標準に戻してあります」 オッケンデンは、スピードメータに貼られた、各ギアの最高速度を示すステーッカーが自慢だという。
サンビーム・タイガーは、アルパインの美しい見た目を残しつつ、高級志向な手直しを受けている。ルーツ・グループらしい特徴も多い。木パネルのダッシュボードにサイドシルまで張られたカーペット。鍵のかかるセンターコンソールを備え、荷室も大きい。
運転席の後ろには、小さな子供か、横向きにチャイルドシートを積むには充分なリアシートがある。オッケンデンとその婦人も、実際に利用してきた。
低い回転数から響く活発なサウンド
車内には、ルーツ・グループらしい、説明しにくい独特の匂いが残る。金属製でチリのきれいなボンネットを持つボディには、洗練さが漂う。
ドアの開口部には三角形の構造材が、エンジンルーム内にはブレースが見える。大きなエンジンとパワーを受けとめるために、ボディシェルが補強されたことの証し。おかげで実際に走行しても振動は少なく、ソリッドな印象が得られている。
ブレーキのフィーリングは良好。かなり大きめのステアリングホイールは、3.2回転する。8km/hを越えると軽くなるが、操舵感に乏しく、欲しいだけのキックバックは得られない。
エンジンは低い回転数から力強く、ギアチェンジに必要な回数も少ない。3000rpmも回せばエネルギッシュな加速が得られ、2本出しのエグゾーストからは活発なサウンドが響き、嬉しくなる。アクセルを戻すと、とたんに静かになるが、踏み込めばまた勢い良く速度を乗せる。
必要なら変速も小気味いい。軽く正確で静かに振る舞うトランスミッションは、ギア比も適正。中くらいの重さのクラッチペダルの操作が楽しい。
サンビームのパフォーマンスは、高回転域側で息苦しくなるエンジンで制限を受ける。だが、改造されたタイガーの方が日常的に乗りやすいのか、疑問に感じるほどオリジナル状態のタイガーは走りやすい。
低回転域から得られるトルクと、幅の狭いタイヤも走りやすさの理由。乗り心地はコシがありつつ快適で、リアがリーフスプリング式のサスペンションながら、路面の影響は思ったほど受けにくい。