【世界初のDOHC量産マシン】フランスが生んだサルムソンGS8ロードスター 前編
公開 : 2020.03.01 07:20 更新 : 2022.08.08 07:51
オリジナルエンジンのサイクルカー
発表から4年の間に1600台のサイクルカーを製造したサルムソン社。英国のGN社に並ぶ、競争力と成功を収めた。
好調だったサルムソン社だが、才能溢れるアンドレ・ロンバードによって、サイクルカーのライセンス製造から方向転換を図る。ロンバードは、自身の名を冠したクルマを生み出すことが夢だったという。
サルムソンの支援の中で、ロンバードはサイクルカーをベースとしたツアラーを設計。フロントサスペンションやリアアクスルはGN社のものと近似しており、リアサスペンションにはリーフスプリングが備わっている。
しかしエンジンは水冷式4気筒エンジンを採用。設計はエミール・プチが行った。背の高いラジエターには斜め十字のエンボスが入り、サルムソン社初のオリジナル・モデルとして1921年7月に発売された。
このクルマはタイプALと呼ばれている。アンドレ・ロンバードは自らの名前のエンブレムを与えたかったようだが、最終的にはイニシャルのALに落ち着いたようだ。
プチが設計したプッシュロッド4気筒エンジンを搭載したサイクルカーは、サルムソン社にとっての屋台骨となった。1921年から1929年にかけて、様々なボディバリエーションを展開し、1万台程が製造されている。
だが今回、英国のクラシックカー販売店、DMヒストリックスの裏庭に停まっているのは、もっとエキサイティングなクルマだ。
レーシングシャシーを備えたGS8
角の丸いレンガのような、細長いラジエターグリルに、切り立ったフロントガラス。ホイールを覆うようにスパッツの付いた、ふくよかなフェンダー。大きく見えるサルムソンGS(グランドスポーツ)8には、サイクルカーという雰囲気はない。
とても繊細なプロポーションを得たボディは、自分で近寄って見るまで実際のサイズがつかみにくい。小さなフレームの上に優雅なラインのボディが載っている。
デザインにはグランプリレーサーを元にした、公道向けのツアラーのような雰囲気が漂う。オリジナルは、1920年代にレーシングドライバーやモータースポーツの関係者に販売されていた、サービス・ド・コルセとして開発された公道向け最後のクルマだ。
目を惹く2トーンに塗られたスリムなボディ。サービス・ド・コルセのトレードマークだった、左右段違いシートや露出したエグゾーストは備わっていないが、同じコンペティション・モデルと同じストレート・サイドのレーシングシャシーを受け継いでいる。
サルムソンGS8は1927年11月から1930年4月にかけて、130台が製造された。リアのリーフスプリングの位置はリアアクスルの下に変更してあり、タイプAL3やVAL3と呼ばれるシリーズより着座位置は10cmほど低い。
フロントアクスルの幅も広げられ、シャシーのより低い位置へエンジンを搭載できるようになっていた。おかげで重心高が下がり、ハンドリングが向上している。
続きは後編にて。