【どちらを選ぶべき?】メルセデスAMG A 45 Sの新車 vs 日産GT-Rの中古車 前編
公開 : 2020.03.14 09:45
互角の速さ
だが、このクルマの四輪駆動システムはフルタイムでもなければ、そのギアボックスはマニュアルでもない。
その代わりに積むのが8速デュアルクラッチオートマティックであり、左右どちらにも必要に応じて伝達可能なトルク(つまり、エンジンが発揮しているトルクの最大50%だ)を流すことの出来るふたつのクラッチをリアアクスルに備えている。
さらに、エンジンは横置きであり、排気ポートとツインスクロールターボがドライバー側に、吸気がフロント側に配置されている。
その結果、レスポンスの向上に繋がる吸気パイプの短縮化に成功しており、さらにパワーで劣るA35が積む量産型M260エンジンで見られたような反応の遅れはこのクルマには存在しない。
ソーンダースの言葉を借りれば、公道における2地点間の移動において、このAMG製ホットハッチがGT-Rと互角の驚くべき速さを持っていることは明らかだ。
例えGT-Rの大柄で均整のとれたボディや、完全にドライな路面状況といったものが違いをもたらしたとしても、それはほんの僅かなものでしかない。
そして、この2台の違いを理解するのに、それほどのスピードも必要無いのだ。
何よりも驚かされたのは、A 45 Sの最大の武器が、その職人技を感じさせる力強いエンジンではないということであり、これほどの強烈なパワープラントと、妥協なく締め上げられたシャシーの組み合わせは、とても日常生活をともにすることなど出来ないだろうと思っていた。
驚異的なレベル
だが、そうではなかった。
このクルマのボディコントロールと高速でのしなやかさは驚異的なレベルに達しており、さらに比較的ソフトな低速での乗り心地は、先代A45では味わうことが出来なかったものだ。
GT-Rのボディサイズが路面との一体感を損なうような場面でも、A45は次に何が起こるかを手に取るように伝えてくるのであり、それはもはやこれ以上は必要ないと言うほどだった。
そして、それはどんなコーナーでも、どんなスピードでも変わらない。
ターンインしている時でさえ、このクルマのドライバーはディフェレンシャルが見事にトルクを配分している様子を感じることが出来る。
どっしりとしたリアが旋回を始めても、A45 Sが求めるのは完全にニュートラルなハンドリングであり、リアをわずかにスライドさせながら前進を続けるのだ。
決して大げさなほどのオーバーステアは感じさせないが、アンダーステアなわけでもない。
ドアが2枚増えているにもかかわらず、200kgほど軽量なこのクルマは敏捷性でGT-Rを上回っている。
速度感応型ステアリングは一定した反応を返してはくれず、荒れた路面ではやや過敏な様子を見せるものの、AMGらしい重みと感触を備えている。
対照的にGT-Rは多くの点で恐怖を感じさせ、まずは、このクルマのゴツゴツとしたフィールと、穏やかなターボエンジンのサウンド、さらにはデリケートながらも急激な加速を見せるアクセルレスポンスといったものに慣れる必要がある。