【ハンドリングの真実】限界性能とは無関係? 評価はシンプル 前編

公開 : 2020.03.14 21:20

さまざまな要素

この仕事を始めた30年以上前、わたしにハンドリングの何たるかを教えてくれたのは、ジム・クラークのチームメイトとしてF1に参戦し、英国版AUTOCARにコラムを執筆していたジョン・マイルズその人だったのであり、当時のロードモデルの出鱈目なハンドリングには驚愕させられることとなった。

当時に比べれば、ロードモデルのシャシー剛性も向上するとともに、サスペンションはより洗練され、タイヤのサイドウォールが腰砕けになるようなことはなくなった。

ステアリングホイールがドライバーとマシンを繋いでいるのだから、正しく設計されている必要がある。
ステアリングホイールがドライバーとマシンを繋いでいるのだから、正しく設計されている必要がある。

だが、電動パワステ全盛の時代に入り、ステアリングアングルだけでなく、しばしば車速に応じてギア比が変わる可変レシオの導入も相まって、ふたたびこの高速で移動する鉄の塊がどこに向かっているのかを感知するのが難しくなって来ている。

そして、ハンドリングに影響を与える要素としてはもっとシンプルであるにもかかわらず、しばしば正しく理解されていない点というものが数多く存在している。

ステアリングホイールだけでも、少し考えてみれば何が必要か分かるだろう。

まず、シャシーやサスペンション、タイヤからの情報をドライバーに伝えることが重要であり、予想通りの動きを実現することが出来れば、そのクルマの挙動はリニアなものだと感じられる。

正しいギア比が与えられていることも重要だ。

スローすぎるステアリングはドライバーに過度な操作を求め、もしクルマがスピンしそうになった場合、コントロールするのに手間取ることになる。

反対にクイック過ぎれば、例え直線であってもステアリングフィールが極端にナーバスに感じられ、スピンしそうになった場合には極めて正確な操作が要求されることになる。

そして、もはや説明など不要だろうが、センターとオフセンターでの適度な重みという点も忘れるわけにはいかない。

だが、これだけではまったく十分とは言えない。

最高のルールにも例外?

例え平均的な体格から大きく外れたようなドライバーであっても快適な運転姿勢がとれるとともに、必要な計器類もしっかりと確認出来るようにしておく必要がある。

さらに、真っ直ぐ腕を伸ばして肩からではなく、肘と手首を使った操作が可能であることが重要であり、ステアリングの取り付け角度もポイントとなる。

どんなスピードでもハンドリングの基本的な特徴が変わってはならない。
どんなスピードでもハンドリングの基本的な特徴が変わってはならない。

確かに、スターリング・モスは腕を真っ直ぐ伸ばしたスタイルでステアリングを握っていたのであり、ミニのステアリングホイール取り付け角度はまるでロンドンバスのようだったが、例え最高のルールにも例外は存在する。

ではステアリングホイールそのもののサイズはどうだろう? 小径であればあるほどスポーティだろうか?

確かにそうかも知れないが、小径ステアリングの場合、クルマのコントロールがより難しくなるのであり、だからこそポルシェマクラーレンはいまでも比較的径の大きなステアリングホイールを採用しているのだ。

さらに、ステアリングリムの太さや感触、表面に使われている素材などの要素も重要であり、つまり、ステアリングホイールとは単に円形をしたハンドルではないのだ。

ドライバーとマシンとを繋ぐ主要な接点であり、もしこうした要素が正しく設計されていなければ、そのクルマのハンドリングに大きく影響を及ぼすことになる。

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