【求められるもう少しの余裕】アウディA6アバント 40 TDI(最終回)長期テスト

公開 : 2020.02.29 08:50

楽しみに感じたクルマでの通勤や旅行

アバントには2.0Lの4気筒ターボディーゼルが搭載され、クワトロではない前輪駆動。最高出力も下がったが、さほど強く実感させられるほどではなかった。充分に力強く、シャシーも上質。時折大きなワゴンボディを忘れるほど。

アバントとサルーンとの荷室容量の差も、実は驚くほど小さかった。サルーンは530Lとかなり大きく、アバントの方が余裕があるものの、565L。リアシートはどちらもリムジンのように広く快適。家族も喜ぶパッケージだ。

アウディA6アバント 40 TDI スポーツ Sトロニック(英国仕様)
アウディA6アバント 40 TDI スポーツ Sトロニック(英国仕様)

サルーンのエアサスペンションはお気に入りだったが、アバントのスチール製スプリングも、クッションの良い乗り心地が味わえた。小さなボートのように揺られることはなかった。

ステアリングホイールの操舵感はニュートラルで、18インチのホイールから充分なフィードバックが伝わってくる。ちなみにサルーンでは20インチを履いていた。そしてサルーンと同じように、アバントでもクルマでの移動や旅行がとても楽しみに感じた。たとえ通勤でも。

燃費は、ボディサイズを考えれば望外に良かった。ディーゼルエンジンには反発も多いと思うが、一度の満タン、73Lで1100km以上の距離が走れる。

英国での軽油価格は安くなく、一度満タンにすると80ポンド(1万1000円)ほどが必要。だが、エフィシェンシー・モードで走れば、優れた航続距離がいつも得られた。

これらはアウディに期待する通りの内容だと思う。目新しさはないかもしれない。でも、それだけではない。

慣れなかったエンジンの一呼吸

まず、50 TDIでも40 TDIでも、エンジンには気になる部分があった。加速時の一呼吸だ。ロータリー交差点や高速道路の合流で、安全に進むために必要なパワーが、必要な瞬間に得ることができない。

その一呼吸は明確で、時には気をもむほど。交通量の多い交差点では、いつも配慮していたと思う。

アウディA6アバント 40 TDI スポーツ Sトロニック(英国仕様)
アウディA6アバント 40 TDI スポーツ Sトロニック(英国仕様)

アバントは輝いていたが、刺激には乏しかった。BMWメルセデス・ベンツで感じる、感覚的な高まり。スポーツモードに切り替えても、変化は限定的。

幅広い魅力を備えたクルマとして、仕上げることに成功はしている。しかしプレミアムさを高める、細かな部分の余裕や威厳までは得られていないように思う。必要だと考えなかったのかもしれない。

A6は素晴らしいクルマだ。だが数週間経って乗り慣れてしまえば、普通のクルマにも感じられてしまった。

長期テストが終了するいま、A6の40 TDIが名残惜しいかと聞かれれば、それほどでもないと答えてしまう。アウディらしいハイレベルの質感は、特に強いアピール力を備えていたのだけれど。

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