【ドライバーズシートを選びたくなる】BMW 730Ldへ試乗 3.0L直6ディーゼル
公開 : 2020.03.02 10:20
滑らかで必要充分なディーゼルエンジン
メルセデス・ベンツSクラスに仕込まれた、ナイトクラブのようなアンビエント・ライトと比べると、7シリーズのライティングは方は控えめ。マイクとスピーカーによって消音させるメルセデス・ベンツほど、BMW 7シリーズの静寂性が高いとはいえない。
それでも窓ガラスの厚みは増し、リアホイール・アーチ内の吸音材も追加され、クルージングは上質そのもの。パドルシフトで目覚めさせない限り、264psのディーゼルエンジンはささやかなハミング音で滑らかに回転する。
最大出力は4000rpmから、最大トルクは2000rpmから沸き立つ。軽くはない車重を力強く引っ張ってくれる。扱いやすさでは強力なガソリンエンジン版やハイブリッド版には及ばないが。
エアサスペンションは、荒れた路面や舗装の剥がれた穴を埋めるかのようにこなす。20インチのランフラットタイヤを履いていたから、充分に巧みな足さばきといえる。
BMWは車内空間の隔離性と、ドライバーへの訴求力とのバランス取りに配慮している。マイナーチェンジ後は、少し外界との独立側に振ったようだ。ステアリングは性格だが、不自然に軽く、低速域では少し修正操作が多めに必要だと感じた。
大型ラグジュアリーサルーンの中でも、最も運動性能に長けていた7シリーズ。エントリグレードの730dは、さらに長所を引き伸ばしたクルマではない。かといって、ライバルを下回るわけでもない。
フロントシートに座るか、リアシートに座るか
高速道路での長距離クルージングは快適。一方で求めれば、2t近い車重を持ちながら、ライバルが真似できないような満足感をドライバーが楽しむこともできる。先進的なシャシー設定のオプションをしっかり選択していれば。
BMW製の6気筒ディーゼルは、7シリーズに求められる走りを、ほぼ満たせるマナーを備えている。リラックスした振る舞いと、滑らかで上質なパワーデリバリーをより享受できるのは、リアシート側のオーナーだとは思う。
メルセデス・ベンツSクラスの方が、総体としては卓越した体験を味わわせてくれるかもしれない。だがマイナーチェンジ後の7シリーズはぐっとその差を縮めた。
どちらのブランドを選ぶかは、主にフロントシートに座るのか、リアシートに座るのかに依存しそうだ。もちろん、運転席ならBMWとなる。
BMW 730Ldのスペック
価格:7万2200ポンド(1032万円)
全長:5260mm
全幅:1902mm
全高:1479mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:14.4-15.6km/L
CO2排出量:176g/km
乾燥重量:1870kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:264ps/4000-4500rpm
最大トルク:63.0kg-m/2000-2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック