【量産車へ展開するEVシステム】GKNジープ・レネゲードeAWD プロトタイプに試乗
公開 : 2020.03.06 10:20
ステアリングに伝わるトルク分配
今回GKNジープ・レネゲードeAWD BEVプロトタイプを試乗したのは、GKN社のテストセンター。スウェーデンの内陸北部、アリエプローグにある。
GKNレネゲードには、エンジンを取り外された際に一緒に横滑り防止装置、ESPが取り外されている。おかげで、凍ったハンドリングコースや高速サーキットを、思う存分走り回れた。
ドライビングモードは3種類がある。アンダーステア傾向のあるスタンダードと、最も自由度の高いスポーツ・モード。その中間に、両極端な間を取ったGKNモードが用意されている。
スタンダード・モードで圧雪の高速サーキットを走らせると、GKNレネゲードのエネルギー回生システムは力強く感じられた。アクセルペダルを離すと、eツインスターはクルマのバランスを維持し、コーナリング前にフロントを落ち着かせる。
左右フロントタイヤへのトルク配分の状態は、ステアリングホイールを通じて感じ取れる。操舵する安心感がある。トラクション・コントロールが介入し、リアタイヤのスピンもしっかり制御されている。
このシステムは、平らな氷上でも有効だった。コーナリング時にアクセルを緩めると、前輪がクルマを安定させているのがわかる。
さらに4輪駆動へ切り替えると、氷上でも圧雪路でも加速力は上昇。リアタイヤでもエネルギー回生をしつつ、アクセルペダルを離した際の安定性を高めてくれる。
量産モデルへと受け継がれるEV技術
スポーツ・モードを選ぶと、オーバーステア傾向が強くなる。eツインスターはフロントタイヤのコーナー外側へトルクを多めに分配。同時にリアタイヤのトラクション・コントロールは自動的にオフになる。
その結果、リアタイヤを横に滑らせながら、クルマを旋回させられるようになる。楽しさが10倍くらいは高まること請け合いだ。
前後の車輪が独立した、機械的にはつながっていない4輪駆動システムだが、2つの電気モーターとトランスミッションの統合制御は印象的なほど高い。モーターはパワフルながら、存在感は薄く感じられた。
GKNジープ・レネゲードeAWD BEVは購入できない。しかしこの技術の多くは、2020年中に発売となる少なくとも6車種のハイブリッドとEVモデルに搭載される。ジープ・レネゲードのPHEV版もその1台だ。
電動化技術の採用が進む当分の間、自動車メーカーはシステムを標準化することで、EVのコストを抑える取り組みを進めるだろう。安全で直感的な操縦性という、ドライバーのニーズも満たしていく必要がある。
スポーティな仕上がりはしばらくの間お預けかもしれない。だが、GKNレネゲードに搭載されたeツインスターが実現する、機敏でレスポンシブな走りは確かめることができた。彼らの努力が報われ、われわれが楽しめる日も遠くはなさそうだ。