ロードテスト ロールス・ロイス・カリナン ★★★★★★★★☆☆
公開 : 2020.03.01 11:50 更新 : 2020.03.08 03:15
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
ほとんどの部分で、カリナン・ブラックバッジのハンドリングは、大柄なロールス・ロイスに予想する通り。運動性のポテンシャルのみを除けば、鋭い走りに驚かされるようなクルマではない。スタビリティとボディコントロールそのものは、スピードを出したい気にさせるものだ。
ほとんど接地面まで、実にシンプルでゆったりした動きのクルマで、目指す走りはライバルたちが見せるバーサティリティやグリップ性能ではなく、どこまでもラグジュアリーなところにある。スポーティさは、スパイス程度に利いていればいいのだ。
重さや大きさは明らかだが、ステアリングはヘヴィではなく、中立付近は穏やかでスロー。それにより、クルマは思い通りのコースを通すことができる。その正確さは、長きにわたりロールスを特徴付けてきた要素だ。また、方向を変える動きは、ある程度までは穏やかだ。
サスペンションはターンインに合わせて多少のロールを受け入れるが、ステアリングを4分の1ほど切るまでは快適な角度に抑えられる。タイトコーナーのアペックスを抜けようとした際の舵角がそれくらいだ。
しかしそこでは、カリナン・ブラックバッジのシャシーが、注意深く隠していた最後のボーナスを与えてくれる。さらなるコーナリングの追い込みとアジリティをみせるのだが、これは四輪操舵システムが最後の力を振り絞ったか、前輪がもたらす加速力のおかげだろう。
理由はどうあれ、このロールスは絶対的に必要となるまで運動性の爪を隠し続け、ステアリングを動かしたり、乗り心地が上下にそわつくたびにそれをちらつかせるようなことはない。
垂直方向のボディコントロールは、かなりソフトでおおらかだが、速度を上げるか、地形が複雑になるか、もしくはその両方が起こるにつれ、すばらしい本源的な安定感を発揮する。まるで、ダンパーがこれ以上は無理だと言っているかのように。そして、それはむしろ好感が持てる。